猛牛のささやきBACK NUMBER
《侍ジャパン》室伏広治から教わった「一投一念」…“マッチョマン”吉田正尚が16年秋に送った「便箋にびっしり直筆の手紙」とは?
posted2021/08/04 11:01
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
JIJI PRESS
東京五輪の準決勝進出がかかる、8月2日のアメリカ戦。重苦しい空気を振り払う先取点をたたき出したのは、オリックスの主砲・吉田正尚のバットだった。
3回裏2死二塁の場面で打席に入ると、カウント1-1から、やや甘く入った3球目を逃さない。バットにボールが吸い付いているかのようなスイングでセンター前に弾き返し、二塁ランナーの坂本勇人(巨人)が先制のホームを踏んだ。
「一振りで捉える」というのは、シーズン中から吉田がよく口にする言葉だが、それを体現した。
今大会初戦のドミニカ共和国戦で日本の初ヒットを放ったのも吉田だった。3番・左翼で先発出場。息が詰まるような緊迫感の中、初回の打席から吉田は落ち着いていた。際どいボール球をしっかりと見極め、カウント2-1からの4球目を鋭いスイングで捉えてレフト前に運んだ。
今シーズンの好調を、そのまま五輪にもつなげられているようだ。
驚異的な三振の少なさ
今シーズン前半戦、吉田は打率(.343)、安打数(108本)、出塁率(.431)でパ・リーグトップに立っている。
加えて、驚異的な三振の少なさも話題になった。367打席でわずか19個。150打席の時点ではわずかに4個で、一時は本塁打数よりも少なかった。選球眼のよさと、振りにいったボールを捉える確実性。ただ吉田自身は、三振が少ないことについてはあまり意に介していないようだった。
「そこは別に、周りの方が気にしているだけで、僕はあんまり。フォアボールの数よりは少なくいたいな、とはずっと思っていますけど、それぐらいですね。三振する時はするし、しない時はしない。いいピッチャーはやっぱり、追い込んでからのウイニングショットが絶対あると思いますので、そういう割り切りも必要だと思います」
三振したかしないか、安打が出たか出ないかで一喜一憂はしない。吉田の基準はあくまで“スイング”だ。