オリンピックへの道BACK NUMBER
萩野公介のメンタルが戻ってきた。
“水泳が嫌”から「もっと泳ぎたい」。
posted2019/06/11 11:30
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Kyodo News
待たれていた男が帰ってきた。
3月から期限を定めずに休養に入っていた競泳の萩野公介が、5月から練習を再開。大会出場を視野に入れていることを明らかにした。
萩野はリオデジャネイロ五輪400m個人メドレー金メダルをはじめ、長年にわたり第一線で活躍してきた。東京五輪でのメダルも期待されているが、プレ五輪イヤーとなった今年、プールから離れていた。
あらためてその経緯をたどってみる。
萩野は1月に行なわれた浜名湾選手権で低調なタイムにとどまった。その変調が明確になったのは、2月のコナミオープンだった。400m個人メドレーの予選、自己記録から17秒以上遅い4分23秒66に終わり、決勝を棄権したのだ。
練習ではうまくいっても試合では。
「体調面なのか、メンタル面なのか、総合的なものかもしれないですが、本人も分からないと申しています」
指導する平井伯昌氏はこう説明しつつ、「練習ではうまくいってもレースではぜんぜん違う泳ぎをすることがある」とも付け加えた。その後、病院で検査を受けたが異常はなかったことを合わせて考えても、メンタル面の問題であることは推測できた。
翌月、萩野は、海外合宿への不参加および日本選手権欠場を発表した。それは世界選手権を断念すること、その世界選手権の結果によって得られる東京五輪代表内定の機会もあきらめることを意味していたから、衝撃は大きかった。
その状況から、しばらくの休養を経ての再始動となった。
再始動に至った理由は「もっと泳ぎたい。高みを目指したい」という思いが湧いてきたことだったという。