オリンピックへの道BACK NUMBER
調整は順調だったのに…バドミントン・桃田賢斗はなぜ敗れたか 世界ランク1位が抱えた“失ったリオの重圧”
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byGetty Images
posted2021/07/30 17:04
バドミントン・桃田賢斗の敗退は日本のみならず世界にも衝撃を与えた。世界ランク1位でむかえた自国開催の五輪に何が起こったのか
活動停止処分でリオに出られなかったときから
オリンピックという舞台だからこそ、ここに懸ける思いも影響した。
「負けたくない、勝ちたい気持ちが強過ぎて、空回りしてしまった部分はあると思います」
今大会はほとんどが無観客での開催であり、その分、伸び伸びとプレーする選手の姿も見られる。でも桃田にとって、無観客であろうと、オリンピックは特別な舞台だった。
活動停止処分を受けてリオデジャネイロ五輪出場の機会を失った桃田は、以前は苦手だったランニングなど地道なトレーニングにも熱心に励むようになった。また支えてくれる人々への感謝を形だけでなく心から語るようになるなど、反省をいかし取り組んできた。
失った大舞台にようやく立てるという思いがあったし、そして周囲の人たちへの強い気持ちがあった。
「前回大会(リオ)に出られなかった分、支えてくださった方々に恩返しするという気持ちでプレーしたいと思っています」
開幕する前の抱負である。だからこそオリンピックという大舞台で結果を出したいと強く思い、それが重圧になった面も否めない。
丁寧な取材応対に感じたこと
試合を終えた桃田の目には涙が浮かんでいた。
「いろいろなことがあったんですけど、たくさんの人のおかげで、こうやってコートに戻ってこられて、憧れの舞台に立つことができました。結果は出せなかったですけど、皆さんに感謝したいです」
失意の大きさはどれほどだったか。
それでも桃田は、1つ1つ、丁寧に取材への応対をし、率直に話し続けた。
そこには、リオを失ったときから再起し、真摯に進んできた時間と、そこで養われた姿勢があった。
敗れてなお、桃田賢斗は第一人者として立ち続けた。
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