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「美誠が100%なら誰にも負けない」伊藤美誠を中学から支える松崎コーチが語ったトレーニングと強さの秘密《初の金メダル》
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph bySTARTS CORPORATION
posted2021/07/27 17:05
伊藤美誠、母・美乃りさん、松崎太佑コーチ。松崎が伊藤の指導をするようになって7年、分厚い信頼関係が築かれている。
フィジカルトレーニングは実は少ない。
カタールオープンでの丁寧選手との試合では、相手が伊藤のサーブとリターン、とりわけリターンの変化とスピードに驚きの表情を見せていた。中国の選手を圧倒する攻撃のスピードは、伊藤の最大の武器になっている。
――伊藤選手の動きで重視しているところは。
「美誠は152cmと背が小さいので、フットワークの部分はすごく重要ですね。相手は美誠の背が小さいので、左右のワイド、ワイドに振り回してくることが多いんです。実際、カタールオープンで対戦した丁寧選手は、思い切りそこをついて来て美誠を左右に振っていました。そこに付いていけないとラリーを制することができないんですが、丁寧選手が思っている以上に美誠が早く動いて質の高いボールを打ち返していた。それで、圧勝できたんです」
――左右に振られても体勢を崩さずに打ち返しているのが印象的でした。体幹を含めフィジカルベースの練習をかなりこなしてきたのでしょうか。
「フィジカルトレーニングは一時期していましたけど、今はほとんどやっていないです。日本代表のトップレベルの選手と比較しても1/10ぐらいだと思います。そのトレーニングの代わりに卓球の基礎的なこと、例えば速く動く、スウィングを速くするとか、卓球を始めたばかりの頃にやるようなことなのですが、それを卓球の練習の中に取り入れています。普通の試合よりも負荷が掛かった練習ですが、そのやり方が美誠には合っているかなと思います。ラリーのスピードも上がっていますからね」
――動きに負荷をかける練習でスピードとキレを生むということですか。
「それで年々、身体が絞れてきています。毎日一緒にいると気づきにくいんですが、過去の映像を見てみると、全然違いますからね。スピード、動きの質、体のキレと練習の中で求めているものが本人も僕も高くなっています。東京五輪まで1年間ありますので、もっと強くなると思います」
松崎コーチは、自信に満ちた表情で、そう言った。
東京五輪はコロナ禍の影響で2021年7月に延期された。今の勢いがあればと残念がる声もあるが、果たして松崎コーチは1年の延期をどう捉えていたのだろうか。
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