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「オリンピックは異常なんだ。勝つには、自分が異常になるしかない」大野将平が語っていた柔道と金メダルへの“覚悟”《2連覇達成》

posted2021/07/27 11:07

 
「オリンピックは異常なんだ。勝つには、自分が異常になるしかない」大野将平が語っていた柔道と金メダルへの“覚悟”《2連覇達成》<Number Web> photograph by Takashi Shimizu

7月26日、五輪2連覇を達成した大野将平。五輪は“異常な舞台”だと語っていた。

text by

熊崎敬

熊崎敬Takashi Kumazaki

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photograph by

Takashi Shimizu

リオ五輪、東京五輪で2連覇を成し遂げた孤高の柔道家は、勝利を掴むために、自ら“異常な世界”へと足を踏み入れていた。【初出:『Number』2020年7月30日号】

「大舞台を楽しみたい」

 オリンピックに臨む選手たちが、いつからか口にするようになった。

 そこには楽しむことによってプレッシャーから解き放たれ、いいパフォーマンスができるという考えがある。

 リオ・オリンピック柔道男子73kg級の金メダリスト、大野将平の頭に楽しむという言葉はない。

「この競技を始めたころは楽しさもありましたが、勝たなきゃいけない立場になって“楽しい柔道”とは決別しました。そもそも柔道はきつくて、しんどい。稽古では投げ飛ばされ、首を絞められ、関節を極きめられるわけですから」

 だが一度、公式戦を楽しもうとしたことがある。2018年4月、福岡での全日本選抜体重別選手権のことだ。

「このときはケガで稽古不足、加えて講道学舎時代からの先輩、海老沼匡先輩と初めて実戦で戦えるということで、楽しもうという気持ちが勝りました」

「殺し合いをするくらいの気持ちで戦わなきゃ勝てません」

 あこがれの先輩との対戦は準決勝で実現し、大野は合わせ技一本で敗れる。無差別級の大会や棄権を除けば、実に3年ぶりの敗戦。このとき大野は痛感する。

「やっぱり、楽しんでいる場合ではない。畳に立ったときにそんなことを考えるのは、無駄でしかないんだ、と」

 そしてこう続ける。

「ぼくはメンタルについて考えるとき、覚悟という言葉をよく使います。それは攻撃的に、強気に戦いたいと思うから。柔道は格闘技、殺し合いをするくらいの気持ちで戦わなきゃ勝てません。そうした覚悟が、試合が近づくにつれて自然と固まっていくわけです」

 自身初のオリンピックとなる2016年のリオで、5試合中4試合で一本勝ち。それは“大本命の順当勝ち”という文脈で報じられたが、大野にとっては違う。死に物狂いでつかみとった勝利だった。

【次ページ】 「五輪で勝つには、自分が異常になるしかない」

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