試合を見たことがある人なら古橋が前線から激しくボールを追う姿を何度も目にしたはずだ。「僕は攻撃だけではなく、守備も評価されての起用だと思っています」と古橋はよく言っていたが、自分の特徴の幅を広げ、どんな監督にも必要とされる選手になるべく守備に磨きをかけていった。

　山口蛍は、「前線であれだけ追ってくれるとラクです」と語っていたが、献身的かつ豊富な運動量をベースとしたアグレッシブな守備は、もはや古橋の代名詞でもある。森保一監督が率いる日本代表の常連になってきているのは、決定力はもちろん守備面での貢献が大きいからともいえる。

なぜ名選手たちは古橋を愛したのか？

　古橋の移籍壮行会にはイニエスタが参加。「今日は僕たちにとって悲しい日。亨梧という大事なチームメイトが、シーズンが残る中で去っていくのは悲しい気持ちだ。同時に彼が自分の夢をかなえるために、成長を続けるためにヨーロッパの舞台で挑戦できるということは本当にうれしい。クラブ、そして日本を代表する選手としてこれからも頑張っていってほしい」とメッセージを残し、一緒にプレーできなくなることを残念がった。

　世界のトップクラスの選手が気持ちよく全てを教えてくれたのは、古橋の学ぼうとする意識の高さ、壁を作らない正直で素直な人間性が大きい。それゆえビジャやイニエスタには非常に可愛がられた。人格者でもあり、世界最高峰のプレーを見せていた選手にここまで愛される性格ならばどこの国にいってもチームメイトと仲良くやれるだろう。

ヴィッセル神戸では、イニエスタ、ビシャらとともに天皇杯を制した　©Getty Images

中村俊輔がいた「名門・セルティック」の今

　古橋が移籍したセルティックは、どんなチームなのだろうか。

　セルティックと言えば多くの人は中村俊輔を思い出すだろう。2005年から2009年まで4シーズンにわたってプレーし、現地では今もサポーターに慕われ、支持されている。2006年9月、チャンピオンズリーグのマンチェスター・ユナイテッド戦で見せたFKは今や伝説になり、グラスゴーのサポーターの間で語り継がれている。

セルティック時代の中村俊輔（2006年撮影）　©Takuya Sugiyama

　チームは創設1887年の歴史あるクラブでホームタウンはグラスゴーにある。プレミアリーグの強豪で過去リーグ戦優勝は51回を数え、2011-2012シーズンから2019-2020シーズンまで9季連続でリーグ優勝を果たしている。2020-2021シーズンは2位に終わり、2つのカップ戦タイトルも逃し、無冠に終わった。欧州リーグもグループステージ最下位となり、セルティックにとっては屈辱的なシーズンに終わった。

【次ページ】　なぜ日本人最高クラスの移籍は実現した？