プレミアリーグの時間BACK NUMBER
辛口キーンが「すべてを備える」と絶賛する20歳の逸材MF ノリッチの新戦力「スコットランド産イニエスタ」から目を離すな!
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2021/07/23 17:01
今季、チェルシーからノリッチに武者修行に出るギルモア。20歳の逸材が今季のプレミアの注目選手となる
結果、移籍先としてのノリッチは理に適った選択肢だ。
チェルシーの望みは、現行の2ボランチが「ベテラン度」を高める2022-23シーズンを前に、中盤中央のレギュラーとしてプレミア経験を積んだ来夏のギルモア帰還である。
トゥヘルとしては、ノリッチを指揮するダニエル・ファルケは自身がドルトムント監督時代に二軍を率いていた指揮官で、ノリッチでもプレッシングを効かせたポゼッション・サッカーという、自らの志向性に通じる理念があるという確信があるに違いない。
持てる才能が最も生きる位置は中盤中央
ギルモア自身は、「中盤ならどこでも」と言うのかもしれない。祖国スコットランドのレンジャーズでは、ユースで「ナンバー10」として育てられた時期があり、2017年に引き抜かれたチェルシーのアカデミーでも、インサイドハーフとして起用されることがあった。
ただし、アンドレス・イニエスタ、シャビ・エルナンデス、セスク・ファブレガスらに憧れて育ち、セスクがチェルシーでベテランMFとして活躍していた姿を間近で学んでいる当人にとって、最もやりがいがあり、持てる才能が最も生きる位置は、やはり中盤中央になるだろう。
実際、ノリッチは同じボランチでも深部からの楔やライン越しのパスを織り交ぜながら、ビルドアップを加速させられるMFを必要としていた。プレミアでは、敵がボール支配力で勝るケースも増えることから、ラインをコンパクトに保ちつつもマイボールとなった際はアグレッシブに攻めるためのキーマンが欠かせないからだ。
一昨季に最下位で降格したノリッチは、攻撃的な集団として「うぶ」だった。戦い方がオープン過ぎたのだ。教訓を得たファルケのチームは昨季、2部最多ブレントフォードに次ぐ75得点を奪う一方、失点をリーグ最少ワトフォードに次ぐ36に抑えてチャンピオンシップ王者となっている。
リーグの違いがあるとはいえ、75失点の20位でプレミアから降格したチームは、残留再挑戦への準備進行を窺わせる戦いを披露した。
その昨季は、トッテナムからレンタル移籍していたオリバー・スキップが、守備範囲の広い中盤の盾としてノリッチを支えていた。ギルモアと同様、20歳で加入した修業先での活躍である。
だが、チェルシーからのレンタルは直接的なスキップの穴埋めとは思えない。安定性を意図して採用頻度が増す2ボランチの一角で、より守備的な特長の持ち主を相棒として、ボールと仲間たちを相手ゴールへと向かわせる仕事がギルモアの主要任務となるはずだ。クラブは引き続き守備的MFを物色中で、スキップの再レンタルの可能性も残されている。