NBAファイナルが始まる1週間前、ヤニスはイースタン・カンファレンス・ファイナル第4戦で左膝を痛めた。痛みも腫れもひどく、故障直後は1年ぐらいプレーできないことも覚悟した。幸い、精密検査の結果、大きな故障ではなく過伸展とわかり、NBAファイナル第1戦から復帰することができた。自分が欠場したなかでNBAファイナルの出場を勝ち取ってくれたチームメイトに感謝し、彼らとともに戦える喜びを感じていた。

「今、このとき、この経験をできる限り楽しみたい。これは当たり前のことではないのだから」

　プレッシャーから解き放たれ、自由にプレーすることで、ヤニスはさらにその能力を発揮した。NBAファイナル中にそんな彼のグレートネスを見せつけたのは、シリーズの流れを変えた2つのアリーウープ・プレー──厳密にはアリーウープに対するディフェンスと、ヤニス自身が決めたアリーウープだった。

同点を阻止したヤニスの長い手

　1つ目はバックスの1勝2敗で迎えた第4戦。

　4Qの最後の3分余だけで3回リードが入れ替わり、競り合う大激戦のなか、残り1分28秒にチームメイトのクリス・ミドルトンが2本連続でシュートを決め、バックスが2点リードを取った。

　サンズは直後の攻撃で、デビン・ブッカーとセンターのデアンドレ・エイトンのアリーウープ・プレーを狙い、ゴールを脅かした。この試合42得点のブッカーでディフェンスをひきつけ、高さと運動能力のあるエイトンに高いパスを出すという鉄板のプレーだ。またも同点が、と思った瞬間、エイトンの前にヤニスの長い手が伸びてきた。直前までブッカーのドライブインを警戒していたヤニスだが、瞬時の判断でブロックに跳び、ダンクを阻止したのだ。

　勝敗がかかった重要な場面でのスーパープレーだった。

デアンドレ・エイトン（サンズ）のシュートをブロックするヤニス・アデトクンボ　©Getty Images

　結局、このブロックが効き、バックスはリードを保って勝利。シリーズは2勝2敗のタイに戻った。

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