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「世に出していいのかなと思いましたが…」大迫傑が明かす、本番を前に“練習日誌”を公開する理由
posted2021/07/26 17:06
text by
藤森三奈Mina Fujimori
photograph by
Junya Osako
「大迫傑」と聞いて、抱くイメージは何だろうか?
ストイック、かっこいい、人と違う……? 確固たる信念を持ち、遠い存在のように思うが、彼も一人の人間であり、東京オリンピックに向けて、心はそれなりに揺れ、ノイズにイライラすることもあった。
今年に入り、1月下旬にケニアに移動。そこからオリンピック直前までの6カ月、調整はケニアでする予定だった。同時に、自分の気持ちを整理するために付け始めた練習日誌。このたび、その日誌を書籍『決戦前のランニングノート』にまとめ、全公開することになった。
「書きすぎたかもしれない」と言うほど、赤裸々に
本人が「書きすぎたかもしれない」と言うほど、日誌には赤裸々に、揺れる思いが書かれている。
例えば、オリンピック開催の是非が問われている渦中の2月某日には、こう胸中を綴っている。
「マラソンに限っていうと、オリンピックがなかったとしても、その後の東京マラソン、ボストン、他のメジャーズでリベンジすればいい」
マラソンランナーにとっては、他にたくさんオプションがあるのだと、自分に言い聞かせ、オリンピックがなくなってもモチベーションを保てるようメンタルをコントロールしているようにも思える。
また、ある日には、
「最近の悩みは競技外。シュガーエリートであったり、他の人を動かして仕事をすること。競技内で実践している『シンプルに必要なこと』に集中したり、目標から逆算して自分のやるべきこと(仕事)をみつけるのって、自分を俯瞰することを意識すればそんなに難しくないと思う。(中略)
競技は自分との対話に集中すればいいから楽しい」
と、競技外の悩みも吐露している。実は彼はケニアで、練習だけではなく、次の夢に向けて動き出していたことも具体的に知ることができる。