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「世に出していいのかなと思いましたが…」大迫傑が明かす、本番を前に“練習日誌”を公開する理由
text by
藤森三奈Mina Fujimori
photograph byJunya Osako
posted2021/07/26 17:06
ケニアで練習日誌をつけている大迫
なぜ日誌を公開したのか、大迫に聞いた
そして日が経つにつれ、ケニアは新型コロナウイルスの蔓延が進み、ついにロックダウンとなる。拠点としていたイテン(標高約3000m)には特にガイドラインが示されていなかったため、マスクをしないで走っていた大迫に、ある事件が訪れる。
そこから、急遽、自宅のあるアメリカ、ポートランドへと戻ることになるのだが、そのあたりの日誌には臨場感があふれる。
練習日誌には、もちろん毎日の走行距離も書かれている。この距離にも驚かされる。標高3000mの地で、これだけトレーニングを積んでいたのか――。
家族と遠く離れ、黙々と練習を積んできた大迫。ベールに包まれた選手ともいえるが、この本を読むと、少しだけ彼の素顔を知ることができる。
なぜ、大事な時期に、日誌を公開することにしたのか、大迫に聞いた。
「公開することに最初は迷いがありました。そもそも日誌って人に見せるものじゃないじゃないですか。書き始めると正直な部分が出てきてしまうんですよね。書籍にまとまったとき、こんなこと書いてしまって、世に出していいのかなと不安に思いました。でも自分のなかで整理ができたし、それを知ってもらったうえでレースを見てもらったら何かつながる部分があるのかなと思います」
「大迫傑」に対して、新しいイメージが加わる一冊だ。
Number Books
大迫傑が考案したランニングノート付
東京オリンピックに向けて、大迫傑は日誌を付け始めた。この日誌がなぜ読み始めたら止まらないほど面白いのか――。作者が陸上選手だからか? オリンピアンだからか? いや、大迫傑だからだ。
<定価1,870円(税込)/大迫傑・著>
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