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「レーシングアクシデント」とは? フェルスタッペンとハミルトンの接触事故で物議を醸す、善と悪の境目<F1イギリスGP>
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2021/07/22 17:01
接触による10秒のペナルティをものともせず、ハミルトンは母国GPに勝利し、通算99勝目を挙げた
両陣営だけではない。レース後のパドックはレース関係者もメディアも意見が分かれた。フェルスタッペンの母国オランダの記者は、裁定に対して異論を唱える。
「事故の責任というのは、どちらか一方だけにあるわけではないことは理解しているが、今回はあまりにも不平等だ。マックスはリタイアに追い込まれただけでなく、マシンが大破した。その責任が10秒のタイムペナルティというのはフェアではない」
一方、ハミルトンの母国イギリスのメディアには、事故の原因はむしろフェルスタッペンにあるという者もいる。
「フェルスタッペンは常にアグレッシブで、これまでは相手が引くことで事故に巻き込まれずに済んでいた。あのコーナーもサイド・バイ・サイドで、イン側にいたのは、ハミルトンだった。しかし、フェルスタッペンは引かなかったため、あのようなクラッシュとなった。タイトル争いをリードしているのなら、あのようなリスクを冒す必要はない」
バトルにつきもののリスク
レース関係者やメディアの大勢は、今回の一件は純粋なレーシングアクシデントだと見ている。
「マックスはルイスが引くと思ってコーナーに進入した。そして、ルイスはマックスが引くことを期待していた。しかし、どちらも引かなかった。なぜなら、そうすれば、自分がこのレースで負けることを2人とも本能的に悟っていたからだ。レーサーというのはそういうものだ。だから、あれはレーシングアクシデントとして、ペナルティなど科さずに処理されるべきだった」 (某イギリス人記者)
故意に接触したり、ミスによって起きた事故ならペナルティは必至だが、トップドライバーがリスクを冒して演じたバトルに善悪はない。アイルトン・セナ対ナイジェル・マンセル、ミハエル・シューマッハ対フェルナンド・アロンソ——そういうバトルを私たちは見たい。
F1の聖地で起きた今回の事故は悲劇ではない。むしろ、ハミルトン一強時代に別れを告げ、新しいライバル関係の序章として前向きに受け止めたい。