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GI競走で誘導していたあの人が…JRA職員3人が東京五輪で《総合馬術・馬場馬術》に挑む “会社員”ならではの葛藤を超えて
text by
カジリョウスケRyosuke Kaji
photograph byRyosuke KAJI
posted2021/07/23 11:00
2019年に行われたテストイベントで東京のコースを走る戸本一真
“日本のエース”は妻と息子を残し、7年間のオランダ単身修業
馬場馬術の佐渡一毅(さどかずき)は1985年京都府生まれの36歳。今大会の馬場馬術競技において日本のエース的存在であるが、10代の頃から輝かしい成績を残しているような他の日本代表選手たちと比べると佐渡の成績は目立ったものではなかった。
2014年、29歳で挑んだ仁川アジア大会では個人5位、団体銀メダル。その直後に佐渡は東京オリンピックに向けてJRAの職員の中で最初にヨーロッパへ派遣された。妻と生後6カ月の息子を日本に残して。
「馬に対しても人に対しても、諦めない姿勢」
オランダに来た当初、佐渡は文化の違いに馴染めずにいた。彼らの発言はこんなことまで言っていいのかと思うほどオープンで、嫌なものは嫌とはっきりいう。言葉で伝えることで落とし所を見つけていく。「どこまで自分の意見を通すべきなのだろうか?」と。佐渡は自分の立ち位置や意見の通し方に戸惑っていた。
2015年に佐渡はリオデジャネイロオリンピックの地域予選に出場し団体枠獲得に大きく貢献。しかし、翌2016年に行われた代表選考会で結果を残せずメンバー落ちの苦い経験をした。その後、縁あって現在のトレーナーであるImke Anne Marian Schellekens-Bartels(北京オリンピックオランダ代表で銀メダル。以下、イムケ)をトレーナーに迎える。
「イムケもティネケ(イムケの母)も何か問題があっても諦めない姿勢を持っていた。それは馬に対しても人に対しても。解決し改善しようとし、解決しなかったとしても反省して次に繋げていく。日本人以上に真面目で、正直。その姿勢が尊敬できるし勉強になりました」