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GI競走で誘導していたあの人が…JRA職員3人が東京五輪で《総合馬術・馬場馬術》に挑む “会社員”ならではの葛藤を超えて
 

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カジリョウスケ

カジリョウスケRyosuke Kaji

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photograph byRyosuke KAJI

posted2021/07/23 11:00

GI競走で誘導していたあの人が…JRA職員3人が東京五輪で《総合馬術・馬場馬術》に挑む “会社員”ならではの葛藤を超えて<Number Web> photograph by Ryosuke KAJI

2019年に行われたテストイベントで東京のコースを走る戸本一真

 ウィリアム夫妻は戸本の真摯な取り組みや既にレベルの高い騎乗技術とは対照的に、あまりにも謙虚すぎる姿勢をとても不思議がった。「自信」とは、日本人的な感覚でいえば結果を出したり褒められたりして何らかの根拠を得てのみ形成されるように思える。だが、彼らが大切にしているのはそれだけではなく、素直に自分が好き、自分を人として凄い、素敵だと思える気持ちだ。ウィリアム夫妻は、戸本が更に上を目指すためにその“根拠のない自信”が必要だと見抜いていた。

 歩未は言う。

「頑張らなくても、そのままの自分に100点をあげ続けるって“そんなバカな”ぐらい難しいことですよね。でも、これだけ頑張ってきた一真だからこそ、今いるところに立っているのだとも思います」

オリンピック本番までは「毎朝、馬の状態を見ることが恐怖」

 2019年8月、馬事公苑でテストイベントが開催された。戸本は実際に馬事公苑やクロスカントリーのコースを走行したことで「必ずこの会場に戻ってくるんだ」という思いが強くなった。同時に、東京の夏の炎天下で行われる可能性のあるクロスカントリーなど、馬の消耗を実際に経験した。戸本らは世界選手権で4位の成績を残したメンバーだ。地元開催でさらに上位を目指すためギリギリのところまでトレーニングを重ね、馬の体調管理に神経を張り巡らしている。

「毎朝、馬の状態を見ることが恐怖に近い。馬の肢をチェックして、『あぁ、今日も大丈夫だった』とホッとして。馬装して、またトレーニングをして……。今はまだ馬事公苑に帰るための権利を得たに過ぎない。とにかく無事に馬とともに東京に辿り着きたい」

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