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「何も怖くない」167cm“国内最強”司令塔・富樫勇樹はエース八村、渡邊、馬場を活かせるか? 狙うのは「スピードのミスマッチ」
posted2021/07/19 11:00
text by
青木美帆Miho Awokie
photograph by
Tomohiko Tagawa
時は2019年7月。1カ月後に自身初のワールドカップを控えた富樫勇樹は、強化合宿中に右手を骨折した。診断は全治2カ月。本番の出場は難しいと医師に宣告された。
「みなさんが思うほどすごく落ち込んだりはしなかったんです。ケガした直後にトレーナーと『折れてたらアウトだね』と話をしていて、覚悟ができていましたし。本番も『ここに自分がいたら……』なんてことはまったく思わず、一ファンのような気持ちで観戦していました」
しかし、富樫の感情はほんの一刻だけ激しく揺れていた。
「(フリオ・)ラマス監督に『チームから離れなければならない』と報告したときは……。ほぼ全試合スタートで使ってもらっていたのに、本番に出られないのかと。あのときばかりは悔しさと寂しさを感じました」
あれから2年。当時の悔しさを胸に、富樫がいよいよ世界に挑戦するときが近づいてきた。
「力の差があって当たり前だから、怖くない」
身長167cmと小柄ながら“国内最強”の称号を持つ司令塔は、得点源となる八村塁、渡邊雄太、馬場雄大にいかに気持ちよく点を取らせるかにフォーカスする。その上で「どの国も俊敏さよりサイズアップを優先させてくるので、スピードのミスマッチが起こる可能性は高い」と、自身の武器であるスピードをフルに生かす所存だ。
予選で対戦する3チームは、世界ランク42位の日本にとっては総じて超格上。ワンサイドゲームになる可能性は当然あるが、富樫は意に介さない。
「力の差があって当たり前だから、何も怖くありません。これまでやってきたことを全力でぶつけたら、どれだけ通用するか……むしろ楽しみしかありません」
その心は、強敵に挑む少年漫画の主人公のように高鳴り、燃えている。
富樫勇樹YUKI TOGASHI
1993年7月30日、新潟県生まれ。米モントロス・クリスチャン高、bj秋田、テキサス・レジェンズ(Dリーグ)を経て、'15年より千葉ジェッツでプレー。今シーズン初のリーグ優勝を遂げた。PG。167cm、65kg。