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日本代表の“新型トップ下”鎌田大地が「両親のために」プレーする理由…父が土下座して頼んでくれたこととは
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byKiichi Matsumoto
posted2021/07/13 17:03
5月28日のミャンマー戦で10-0の大勝に大きく貢献した鎌田
「(一番は)両親のためという感じなんです」
誤解されがちだが、気合いが入っていないわけではない。どの試合だろうが、いつもどおりというのが鎌田のスタンスである。
森保ジャパンの中心となってきた今、日本代表で活躍することを喜んでくれる人がいる。ほかならぬ両親だ。
「サッカーは生き抜くため、自分のためっていうのは当然ありますけど、(一番は)両親のためという感じなんです。自分がサッカーやるのを見るのが好き。代表でプレーしたいというのも、両親がテレビで応援できるから。どちらかと言うとそっちのほうが大きい。だから両親からも『代表でもっと見たいから、しっかり頑張って』と言われます」
ずっと応援してくれている、その感謝。
愛媛に生まれ、中学になるとガンバ大阪のジュニアユースに入った。大阪の祖母の家に住まわせてもらったが、「毎日がキツすぎて」サッカーを辞めようと考えた。父に相談すると「同学年で一番になってから言いなさい。それでも辞めたいなら辞めていい」と言われた。父の言葉によって鎌田少年はハッと気づいた。サッカーが嫌いになったんじゃない、サッカーがうまくいっていないから辞めたいと思っているのだ、と。母からも激励された。サッカーを辞めたいとは思わなくなった。
父は土下座してまで、頼んでくれた
あるときは、思春期ということもあって小さな衝突を繰り返してきた祖母が大阪まで様子を見に来た父親に「もう面倒見切れない」とこぼしたことがあった。父は土下座してまで、頼んでくれた。その光景は、今も目に焼きついている。父親の思いは痛いほど伝わってきたし、自分の態度もあらためた。
サッカーで親孝行をする──。
苦しくても、辛くても、評価されなくても。そのモチベーションがあるから、迷うことなく上を目指そうと思えた。その熱量は昔も今も同じだ。
欧州でも代表でも活躍できるようにはなってきた。
ただ、「まずはクラブ」というスタンスは崩さない。