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“暗黒時代到来”の酷評から34戦無敗でEURO優勝… イタリアと“栄光に無縁だった”マンチーニ監督&ビアッリのリベンジ劇
posted2021/07/12 17:03
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
Kaz Photography/Getty Images
「(3年前に)W杯出場を逃したが、その後もずっと自分たちを信じ続け、諦めなかった。この勝利とトロフィーは、その証明にほかならない。これはイタリアン・フットボールのルネサンスなんだ」
EURO決勝後の記者会見で、この試合のスターオブザマッチに輝いたイタリアのレオナルド・ボヌッチが話した言葉を、英語の同時通訳はそう伝えた。カルチョの国の代表チームは、文字通り、見事な蘇生(ルネサンス)を果たした。
アッズーリはこれで無敗記録を34試合に、連勝記録を15試合に延ばし、今大会を全勝で優勝。これ以上ないほどの成績だ。ただし3年前にロベルト・マンチーニ監督が就任した際、こんな未来を予想できた人はほとんどいなかっただろう。
なにしろその半年前には、ロシアW杯の出場を懸けたプレーオフでスウェーデンに敗れ、1958年以来となる屈辱を味わったのだ。
カルチョの暗黒時代の到来さえ囁かれていた当時、次の主要大会で頂点を極めるなんて口にしたら、失笑を買ったに違いない。だが、当事者たちは自分たちを信じ続けて、偉業を成し遂げた。
2分でいきなりイングランドに先制を許しても
しかも、過去のイタリア代表とは一線を画す新鮮なスタイルによって。
かつての手法から脱却し、トップレベルに返り咲いたのは、相手のイングランドも同じだ。そんな似た者同士の決勝で勝負を分けた要因は、両指揮官の持つ経験の差やチームの伝統、そして運を引き寄せる強い想いに見出せそうだ。
イタリアにとって敵地ウェンブリーでの決勝は、開始早々にキーラン・トリッピアーのクロスから、ルーク・ショーにボレーを決められる苦しい展開に。その後は球を持ちながらも決定機を作れないまま前半を終えると、後半序盤にマンチーニ監督が動く。中盤と前線中央にフレッシュな選手を投入し、全体の機動力を高めてあらためて主導権を握り、ジリジリとイングランドを押し込んでいった。