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“暗黒時代到来”の酷評から34戦無敗でEURO優勝… イタリアと“栄光に無縁だった”マンチーニ監督&ビアッリのリベンジ劇
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byKaz Photography/Getty Images
posted2021/07/12 17:03
勝負所と逆境に恐ろしく強い。世界のサッカーファン誰もが知るアッズーリの姿がついに戻った
ボヌッチ魂の一撃、老獪なカルチョらしいファウル
62分にはフェデリコ・キエーザが流れるようなカットインから右足で狙い、GKジョーダン・ピックフォードにセーブを強いる。マルコ・ベッラッティとジョルジーニョを中心にパスを回し、敵陣でプレーを続けると、再び左サイドのキエーザがクロスを上げてCKを獲得。そして右からのCKをニアサイドでフリック、ファーサイドのベッラッティが頭で狙ったボールはこぼれ、そこにボヌッチが詰めて同点とした。
するとイングランドはドイツ戦以来、今大会2度目の採用となった3バックを諦め、最終ラインを4枚に変更。だがそれはむしろ、イタリアの攻撃の生命線である左サイドをより自由にすることとなり、趨勢はさらに青の方に傾いていく。
イングランドの不揃いなプレスを掻い潜り、巧みにボールを持ちつつ、時には一気に相手最終ラインの裏を狙う。また危ないシーンにつながりそうな局面では、老獪なジョルジーニョを筆頭に、プロフェッショナルなファウルも辞さなかった。
家族のような団結、最後は守護神ドンナルンマ
後半終盤からマンチーニ監督が、キエーザやロレンツィオ・インシーニェ、ベッラッティといった主力を迷いなく交代させられたのは、「互いに多大な敬意を払い続ける集団」(マンチーニ監督)が「家族のように」(ジョルジーニョ)団結しているからだろう。そして延長をスコアレスで終えると、イタリアの名GKの伝統を受け継ぐ22歳の若き守護神ジャンルイジ・ドンナルンマが英雄になった。
イタリアの2人目アンドレア・ベロッティがピックフォードに止められると、イングランドの3人目マーカス・ラッシュフォードがポストに当ててしまい、続くジェイドン・サンチョをドンナルンマがセーブする。
イタリアの5人目、名手ジョルジーニョが決めれば優勝というキックを、ピックフォードに止められた時は流れが変わるかとも思われたが、直後のブカヨ・サカのキックを再びドンナルンマがストップ。イタリアが1968年大会以来2度目の欧州制覇を果たした。