野球クロスロードBACK NUMBER
《来日7年連続の2ケタ本塁打》巨人・ウィーラーが語った「助っ人外国人が日本で成功するために必要な条件」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byKYODO
posted2021/07/11 17:05
7月9日の阪神戦(甲子園)、ウィーラーが左越え9号ソロを放つ。翌日にも同じく甲子園で10号を打った
得点圏打率だ。セ・リーグで唯一の「4割越え」となる4割2分9厘と、勝負強さを見せつける。
キャラクターは陽気。その一方で野球に向き合う姿勢はどこまでも真摯。それが、ウィーラーという選手だ。
彼は「情報」を重んじる。
ピッチャーの球種をインプットして打席に立つのは当然としても、相手の投球スタイルなどの傾向を仔細に詰め込もうとしない。それよりも、自分の手の内を明かさないことをウィーラーは重んじる。
得点圏になればなおさら。このシチュエーションでのアプローチを尋ねたことがある。すると彼は、「もちろん違いはある」と頷きながらも明言をさけるように答えていた。
「『必ずランナーを還す』という大前提の意識があるのは間違いない。私はメンタルを大事にしているから、この気持ちを常に高く持つこと。これが一番。当然、具体的なアプローチもあるが、ここで私が話してしまったら世の中に出てしまうだろ? それを相手が知ったら必ず私の隙を探してくるし、そこで打てなくなればチームに迷惑がかかるからね。だから、詳細を口外するのは気が引けるんだ」
助っ人外国人が日本で成功するために必要なもの
語るより、プレーで魅せる。これがウィーラーの身上なのだ。彼はそれを、大勝負でこそ発揮できる。楽天時代、そのことを物語るパフォーマンスがあった。
ひとつは2017年。西武とのクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ第3戦だ。2-1と僅差の8回、ウィーラーの本塁打でファイナルステージ進出を決定づけた。もうひとつは19年。勝てばCS出場が決まるソフトバンク戦で、相手エース・千賀滉大から逆転2ランを放ち殊勲者となった。
ファンに愛される陽気なキャラクター。フォア・ザ・チームが染みついたプレースタイル。それはウィーラー自身の根っこであり、日本でプレーする上でのポリシーでもある。
外国人選手が日本で成功を収めるために必要なもの。彼はそれを「リスペクト」と言う。
「相手をリスペクトする、ベースボールをリスペクトする。これはずっと変わらないけど、今の私は日本の文化、日本の野球もリスペクトしている。この国でサクセスを手にするためには、大事なことだと思っているよ」
この直後に、ウィーラーが結んだ言葉と笑顔が、とても印象的だった。
「でもやっぱり、ベースボールは楽しんでやるものだよ。子供たちがそうだろ!」
想いをグラウンドで体現する。チームも呼応し、和が生まれる。
大魔王は後半戦も陽気に、真摯に。勝ちどきはいつも、破顔一笑で。