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「大谷翔平=(イチロー+松井秀喜)×2」と絶賛する専門家も… 全米が騒然となった“24歳時の曲芸打ち”と芸術的ホームランとは
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byGetty Images
posted2021/07/08 11:04
2019年6月、当時月間自己最多となる9本目の本塁打を放った大谷翔平
全米も騒然の“曲芸打ち”
6月26日のレッズ戦。
1-1の同点で迎えた8回の第4打席は無死二塁の勝ち越し機だった。ここまでは左前打、右中間二塁打、四球と広角に打ち分ける申し分ない内容。対する投手は守護神ライセル・イグレシアスだった。
彼の特徴は95マイル(約153キロ)超の直球と90マイル(約145キロ)前後の鋭いチェンジアップ。大谷はチェンジアップ3球で1ボール2ストライクと追い込まれた。
4球目は94.5マイル(約152キロ)の直球が内角膝もとを襲った。見逃せばボールのこの球に対し、大谷は瞬時に両足を引きスペースをつくると体を“くの字”に曲げながらヘルメットを飛ばし逆方向に打ち返す左前打を放った。
全米も騒然の“曲芸打ち”だった。
この技術だけでも見る者を唸らせたが、彼の凄さはそのアプローチにもあった。
イグレシアスのウイニングショットはチェンジアップ。その球を想定しながら、94.5マイルの直球を捉え、安打した。「緩い球に合わせながら直球を仕留める」このテクニックは、あのイチローさんがお得意とした超高度なもの。それを大谷は同様にやってのけたのである。
投手にしてみれば、ウイニングショットを待たれた上で自慢の直球を打たれたのでは、お手上げだ。誇り高き投手たちに「参りました」と言わせるこのアプローチも本人は涼しい顔で話した。
「状態は上がってきているのかなと思いますね」
自己最速185キロの打球速度
この打席が“究極の技”ならば、その前に放った右中間二塁打は“極上の力”を見せつけた。
打球速度115.2マイル(約185.4キロ)で飛び出した弾丸ライナーはフェンスにワンバウンドで届いた。角度がつかず本塁打にならなかったことを悔しがった大谷だったが、メジャー2年目にして自己最速の打球速度を記録したことについては淡々と話した。
「それ(打球速度)がすべてではないですけど、速ければ抜ける確率も高いですしヒットになる確率も高い。自分がいいタイミングで捉えていないとそういう打球速度も出ないので、たとえアウトになったとしても割り切れる材料になるかなと思います」