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松井秀喜「なんであんなに飛ぶのか不思議」…大谷翔平とAロッドに共通する“普通とは違う”ホームラン量産のポイントとは
posted2021/07/09 17:04
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Getty Images
時代の変わり目を感じる。
長くプロ野球を取材してきて、日本人のバッターで本当にメジャーリーグで通用した選手は元シアトル・マリナーズのイチローさんと元ニューヨーク・ヤンキースの松井秀喜さんの2人しかいないのが現実だった。
しかも安打を打つ技術とスピードで数々の記録を打ち立てたイチローさんに比べると、メジャーリーガーの中に入ると、日本人が最もその差を感じざるを得ないパワーという部分で勝負をした松井さんの苦労は、すぐ横で見てきただけに並大抵ではなかったことも知っている。
「僕はここにきたらホームランバッターではない。中距離打者だ」
2003年。1年目のキャンプで松井さんがこう吐露したのを鮮明に覚えている。それでもホームランが打ちたいという欲求を捨てることなく、様々なことにトライして、1つ1つ長距離打者への階段を登っていった。
左手首の骨折で、すべては夢と消えた
そうして2年目の04年に到達したのが31本塁打だったのである。そして松井さん自身が「ホームランバッターの証」としてこだわった40本の大台を狙えるところまでたどり着いたが、06年の左手首の骨折で、すべては夢と消えた。
その後は持病の左膝の故障もあり、自分の理想とする打撃ができないもどかしさを抱えながらも、チームの勝利に貢献する打者としてヤンキースでの地位を築き、その結果が09年のワールドシリーズMVPだったのである。
その松井さんをあっさりとロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平投手が乗り越えた。
現地時間の7月7日(日本時間8日)のボストン・レッドソックス戦で放った今季32号は、弾丸ライナーで右翼席に突き刺さる一撃だった。