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石川柊太「ちょっとしんどいんです」 ソフトバンクの29歳が苦しみ悩む“求められるものと生き方とのギャップ”とは
posted2021/07/12 11:01
text by
石田雄太Yuta Ishida
photograph by
KYODO
交流戦での最後の登板となった6月11日のスワローズ戦。8回を1点に抑えながら負けがついた石川柊太は、イニング間のキャッチボールで、あることを思いついた。
「今年は去年の感覚をうまく出せなくて、いつしか腕が上がっていました。それでもまっすぐは低めに投げられるし、スライダーもよかった。ただ、フォークがよくなくて、ホームランも打たれていました。だったら去年みたいに腕を下げてみようかなって、ポッと浮かんできたんです」
昨年は低めに行かなくてもバッターがまっすぐを打ち損じていたし、ホームランも少なかった。イメージはマックス・シャーザー(ナショナルズ)やチャーリー・モートン(ブレーブス)だ。もう一度、あの感じで投げてみようと試したら、いい感覚が蘇ってきたのだという。
「どうせならメチャクチャやってみようと一気に変えたんです。そうしたら悩んでいたところがうまくいって……ただ、遊び心じゃないんですよ。そんな余裕はなくて、何をしてでも抑えなきゃって、必死でした」
「求められるものと僕の生き方とのギャップが」
昨年、最多勝を獲得した石川は今年、開幕投手、金曜のカード頭、交流戦明けと、まさにローテーションのど真ん中を託された。そして先発としてのQS、防御率、WHIPなど内容を表す指標はどれも抜群ながら、勝ち星だけが思うように増えない。それが石川を苦しめる。
「そもそもいいピッチングって何なんですかね。勝ち負けには運もあるし、同じ球でもホームランになったり凡打になったりする。だから気持ちのハードルを上げないよう、自分らしく気負わずやっていこうと……それでも今年は結果で見せなきゃいけない立場なんで、求められるものと僕の生き方とのギャップがすごくて(笑)、ちょっとしんどいんです」
柊太の“柊”はひいらぎと読む。冬に花を咲かせる柊の花言葉は「用心深さ」――すさまじく速いテンポで大胆に投げる石川には、用心深さよりも大らかなイメージがあった。しかし石川はこう言った。
「柊は冬も葉っぱをつける木だから寒さにも勝てるって話は聞いたことがあります。確かに僕には繊細なところがあるから、テンポよく投げないと苦しいんですよね。あまり考え過ぎないようにポンポン投げちゃえって感じはあるのかもしれません(笑)」