酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
大リーグ通算282発→オリックスでレギュラー落ち→代打の切り札も“真面目でイイ奴” アダム・ジョーンズを称えたい
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News
posted2021/07/07 11:03
杉本裕太郎に定位置を奪われる形となったアダム・ジョーンズだが、代打としての存在感は大きい
2018年オフにオリオールズをFAとなったジョーンズは、ダイヤモンドバックスを経てオリックスに移籍した。アダム・ジョーンズがオリックス移籍を決意したのは「東京オリンピック」に出場する可能性があったからだという。
MLB球団は、原則として支配下選手を五輪に派遣しない。メジャーリーガーである限り五輪に出場することはできない。しかしNPBは選手を積極的に五輪に送り出している。ロッテのレアードがメキシコ代表に選出されているが、ジョーンズは「アメリカ代表で出場したい」と希望を口にしていた。
残念ながら7月に入って発表されたアメリカ代表のロースターにはアダム・ジョーンズの名前はなかったが。
日本の多彩な変化球には苦戦してしまった
筆者がアダム・ジョーンズを初めて見たのは昨年2月2日、宮崎のオリックスキャンプだった。来日していることは報じられていたが、キャンプ初旬、外国人選手は別メニューで調整することが多い。メイングラウンドで見ることはないだろうと思っていたが、ジョーンズは朝からグラブをつけて外野で飛球を受けていた。前年まで規定打席をクリアしていたバリバリのメジャーリーガーが、2月早々から日本人選手に混じって練習していたのは驚きだった。
シーズンが始まると主軸の吉田正尚の後を打った。守りには就かず主としてDHで打線に連なった。右腰から始動してひねりを上体に伝えていくフォームは美しく、タイミングが合えば「パカーン」と大きなホームランを打ったが、スイングスピードは吉田正尚と比べればかなり遅い印象だった。
日本投手の多彩な変化球についていくのは難しそうで、空振りをして残念そうな顔をすることもしばしばだった。
1年目は302打数78安打12本塁打43打点、打率.258と物足りない成績だった。
大物メジャーリーガーなのに気さくだった
しかし「ジョーンズはいい奴らしい」と思えることはいくつかあった。
オリックスのホームゲームでは、チャンスでジョーンズが打席に立つと「YMCA」が流れる。彼の希望だと思うが、スコアボードには音楽に合わせて「ワーイ・エム・シー・エー!」と体を動かすジョーンズの画像が流れるのだ。大物メジャーリーガーなのに、実に気さくだった。