酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
大リーグ通算282発→オリックスでレギュラー落ち→代打の切り札も“真面目でイイ奴” アダム・ジョーンズを称えたい
posted2021/07/07 11:03
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Kyodo News
筆者は1978年に「大リーグ中継」が始まった頃からのMLBファンだ。雑誌やムックをたくさん買った。そこで紹介されている大物選手がNPBにやってきたときは、心が躍った。あれから40年以上経ったが、その気持ちは変わっていない。
MLB通算282本塁打のアダム・ジョーンズがオリックスにやってくると聞いたときも、胸がざわついたものだ。
デビュー戦、チームメートはイチローだった
アダム・ジョーンズは高校から2003年のドラフト1巡目(全体37位)でシアトル・マリナーズに入団。高校では遊撃手だったが、外野にコンバートされ、2006年にはMLBに昇格する。
デビューは7月14日のブルージェイズ戦、9番中堅でスタメン出場、このときの一番右翼はイチローだった。
2008年2月にオリオールズの左腕エース、エリック・ベダードとのトレードで4人の若手選手とともにボルチモア・オリオールズへ。一緒に移籍した中には、広島、楽天で投げたキャム・ミコライオがいた。
ジョーンズはオリオールズでスター選手になる。バランスの良い中距離打者で、毎年25本80打点、10盗塁、打率.280前後をマーク。故障による戦線離脱はほとんどなく、指揮官にとっては計算が立つ、扱いやすい選手だった。
2017年WBCでは攻守に大活躍して優勝に貢献
特筆すべきは外野守備だった。守備範囲は並みだったが捕球する能力と打球処理能力が高かった。さらに4度も二けた捕殺を記録する強肩でゴールドグラブを4回受賞している。
ニックネームは「パッポ」。母が幼いころつけたあだ名が、そのまま愛称になった。人気もあり、オリオールズを代表する選手としてオールスターに5回選出された。
オリオールズは弱いチームだったので、ポストシーズンにはなかなか縁がなかった。彼のキャリアのハイライトは、2017年のWBCだろう。
3月18日の2次ラウンドF組アメリカ対ドミニカ戦の7回、4-2とアメリカがリードした展開でアメリカ代表の中堅手ジョーンズは、オリオールズの同僚、マニー・マチャドのバックスクリーン横への大飛球を後ずさりしてホームランキャッチ。この年優勝した「アメリカを救った」と称えられた。