酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
大リーグ通算282発→オリックスでレギュラー落ち→代打の切り札も“真面目でイイ奴” アダム・ジョーンズを称えたい
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News
posted2021/07/07 11:03
杉本裕太郎に定位置を奪われる形となったアダム・ジョーンズだが、代打としての存在感は大きい
2年目、新型コロナ禍の中、いち早く来日したジョーンズは開幕戦からスタメン出場したが、成績はさらに低下。ジョーンズの前を打つ吉田正尚が歩かされ、勝負されることが多くなった。これはオリオールズ史上最高の6年総額8550万ドルの契約を結んだジョーンズには屈辱的だと思われたが、申告敬遠で吉田が一塁へ歩いた後、ジョーンズは表情を変えることなく打席に立ち続けた。
ジョーンズは代打で恐るべき能力を見せている
杉本裕太郎の急成長もあって、ジョーンズはスタメンを外れることも多くなった。
このまま消えていくかと思えたが、ジョーンズは代打で恐るべき能力を発揮しはじめたのだ。
21回起用されて、15打数8安打5打点6四球3三振、代打率.533、出塁率.667。
長打は1本もない。すべてシングルヒット。ファーストストライクを狙いすまして叩き、内野手の頭を越す当たりを打つのだ。自分がここで起用されている意味は何か、を熟知している。MLBでの長いキャリアは伊達ではない、と思った。
アダム・ジョーンズは今では「代打の切り札」になっているのだ。
6月29日、京セラドーム大阪で行われたオリックスーロッテ戦。オリックスは先発投手が崩れて0-5と劣勢だったが4回、6回と杉本裕太郎が2打席連続でホームランを打ち3-5と詰め寄った。
7回表、杉本が帽子を取って客席の拍手に応え、右翼の守備に就く。イニング間のキャッチボールの相手に出てきたのは、この日スタメンを外れていたアダム・ジョーンズだった。普通ならば控えの野手、それも若手がつとめる役割だ。グランドコートを羽織ったジョーンズは杉本とゆっくりとキャッチボールをして、何事もなかったかのようにベンチに引っ込んだ。
そして7回裏、1死二、三塁で紅林弘太郎の代打で打席に立ったジョーンズは、ロッテの救援ハーマンの初球を左前に運ぶタイムリー。勢いに乗ったオリックスは追いつき、ジョーンズがチームを引き分けに導いた。そしてこの当たりでジョーンズは「日米通算1000打点」に達し、表彰された。