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《大関・朝乃山の番付問題》“三段目転落”の賛否「元大関と三段目力士の対戦は“残酷な見世物”にならないか?」
text by
佐藤祥子Shoko Sato
photograph byKYODO
posted2021/07/10 17:03
2010年に現役引退した、横綱朝青龍
「この状況でも朝乃山は3位なのか!」
佐々木 確かに、これがもし横綱だったら「引退勧告」になっていたかもしれない、と見る向きもいましたね。僕がここで今、言いたいことは「朝乃山、再起して頑張れ!」というファンの声が多いことなんですよ。手前味噌ですが『日刊スポーツ』では、毎年「大相撲総選挙」と題してファンからの人気投票をしていて、今回、朝乃山は3位だった。この件があった後の投票なんです。もちろん朝乃山に対して「頑張れ」と言いたい人が投票しているから寄せられたコメントも前向きなのですが、「受け止めて、頑張って再起してほしい」とのコメントばかりでした。実は「この状況でも朝乃山は3位なのか!」と意外でした。圧倒的に人気を落としてしまうかと思いきや、そうではなかったんですよ。
佐藤 そうだったんですね。今後1年間は朝乃山の姿をファンも目にすることができないのは哀しいですが……。今までの朝乃山に足りなかった部分として精神的な弱さを指摘されることも、ままありましたけど、今回の件を乗り切って、これで一皮むけるんじゃないかとも期待しているんですよね。もう、みんなで少しでも前向きに捉えるしかない。
佐々木 朝乃山も、まだなかなかプラスには考えられないでしょうが、逆に時間があるからこそ取り組めることもある。地力をアップするのはもちろん、高砂部屋には幕下上位で関取昇進を目指す村田や寺沢、朝興貴はじめ、再十両を目指す朝弁慶、朝玉勢もいる。今年入門した学生出身の逸材も多いんですよね。プラスの喜び、やり甲斐として、彼らを引き上げること。コロナ禍で出稽古もままならないなか、自分の部屋のなかで強いヤツをバンバン作れば、それが自分のためにもなるんですよね。
能町 とにかく、ファンとしては早く満員御礼の本場所で応援をしたいし、巡業もやってほしいし、記者さんたちにもどんどん取材して戴いて、生の情報をファンに届けて欲しいです。今日の結論としては……。本っ当に雑にまとめさせてもらいますけれど、やはり、すべてが「コロナ」のせいなんですよ。コロナ問題が明けることを、今はただただ願うしかないです!
(【初めから読む】《6場所出場停止》大関・朝乃山の処分は重すぎ? 能町みね子と相撲担当記者が徹底検証 へ)
能町みね子(のうまちみねこ)
漫画家・コラムニスト。『週刊文春』にてコラム「言葉尻とらえ隊」連載中。好角家としてNHK『ニュースシブ5時』にて「能町みね子のシブ5時相撲部」のコーナーを担当。近著に『結婚の奴』(平凡社)、『そのへんをどのように受け止めてらっしゃるか』(文春文庫)など著書多数。
佐々木一郎(ささきいちろう)
1972年千葉県生まれ。96年、日刊スポーツ新聞社入社。オリンピック、サッカーなどの取材を担当し、2010年3月場所から大相撲担当。現在はスポーツ部デスク。ツイッターでは「イチローデスク」と呼ばれ、大相撲ファン4万7000人ものフォロワーを持つ。著書に『稽古場物語』(BBM社)
佐藤祥子(さとうしょうこ)
1967年千葉県生まれ。週刊誌記者を経て大相撲を中心とするフリーライターに。月刊『文藝春秋』にて「大相撲新風録」連載中。『Number』にて相撲コラムを担当。著書に『相撲部屋ちゃんこ百景』(河出書房新社)、『知られざる大鵬』(集英社)など。