短距離走をやっていたら、記録を出しそうなサッカー選手は？

　清水退団後も、杉本はラグビー・サントリーサンゴリアスのスピードコーチや、湘南ベルマーレのフィジカルアドバイザー、大分トリニータのコンディショニングコーチ、プロ野球・楽天イーグルスのフィジカルトレーニングアドバイザーなどを歴任した。

　これだけ他競技選手の走りを深く、近くで観察してきた元スプリンターは滅多にいない。だから、聞いてみたいことがある。

　サッカー界で、もしも陸上の短距離種目をやっていたら、とてつもない記録を出しそうな選手はいますか？

　杉本が挙げたのは、あの快足アタッカーだった。

「自分が指導しているから、ということは全く関係なしで、もし短距離走をやっていたら面白いなと思うのは、宮市亮ですよ。サッカー選手の中では、抜群に才能があります。ただし、彼は足が地面についた時、つまり支持局面で“膝を止める”という感覚・能力が足りない。ここは改善ポイントだと思います。これまでの膝や股関節のケガも、そこに起因しているので。逆に言えば、それができない状態でも、あれだけ速いですからね。もし、できるようになれば、とてつもなく速いですよ。

　今、彼自身からも相談を受けて指導しているところです。ケガの多さが心配されていますけど、もう少し改善できれば、ケガ無くやれるはず。今年で29歳になりますが、あの子が本当に持っているパフォーマンスを出せば、日本のサイドアタッカーでかなう選手はいないと思いますね」

ドイツ2部ザンクトパウリを退団した宮市亮（28歳）。写真はプレミアリーグ・ボルトンでプレーした2012年。チェルシー相手に爆発的な加速でDFイバノビッチ、ケイヒルを置き去りにしたドリブルは鮮烈な印象を残した　©Getty Images

　現在、杉本は法政大学経済学部教授を務める。各競技のアスリートのみなさん、もしも「もっとスピードをつけたいけど、どうすればいいかわからない」とお悩みならば、東京・町田市にある研究室のドアをノックするのも、手かもしれない。