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肘は「かなり使い古されていた、と」手術を終えたDeNA平良拳太郎に、今永昇太が贈った“粋なプレゼント”とは?
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byKYODO
posted2021/07/05 11:01
3月28日の巨人戦で肘に違和感を覚え、結果トミー・ジョン手術を決断した平良選手。長く続くリハビリのあとの捲土重来を期す
「経験上、これぐらいの感じならば10日間あれば絶対に治ると思ってたんです。肘に関しては毎年のように“なにかしら”あったので、今回はそれが強くきたのかな、ぐらいにしか考えてなかった。ですから監督やコーチ、トレーナーさんには、大丈夫ですって押し通したんです」
そしてもうひとつ、開幕当初、敗戦を重ねていたチーム状況も気持ちを焦らせたのではないか。そう問うと平良はうなずいた。
「そうですね。オープン戦で結果を出せていなかったにも関わらず開幕ローテを任せてもらって、それに応えたいという思いは確かにありました。開幕カードでは降板はしましたがいい投球ができていたし、その流れを壊したくないという思いも自分のなかでありました。だから、ある程度そこは無理をしても……」
ここ数年のオフ、平良に翌シーズンの目標をきくと、必ずと言っていいほど「1年間ローテを守ること」と「規定投球回数のクリア」を挙げていた。ここで足踏みをしているわけにはいかない、といった心理状況にあったのは想像に難くない。
突然の登録抹消「100%に戻して復帰した方がいいと」
10日後、再登録された4月8日の中日戦(バンテリンドーム)で平良は、5回を80球1失点のピッチング。上出来に見えたが、序盤ストレートが130キロ台前半とまったく伸びていなかった。後半多少球速は持ち直したが、基本的にはスライダーとシンカーを駆使する、かわすピッチングに終始してしまった。
「(スピード)ガンを見ても、球速は出ていませんでしたし、やっぱり肘に違和感があって、ゆるむなって。強めに投げていいのか怖さも迷いもあったのですが、なんとか5回を投げられて、終わった後も監督やコーチには僕から大丈夫です、と伝えたんです」
だが、その2日後となる10日、不自然な形で平良は再び登録抹消されてしまう。
「いろいろ考えました。結局、中10日で大丈夫ですと言っておいて100%の状況で投げることができなかった。あの試合は、たまたま抑えられただけです。だったら本当に100%に戻して復帰した方がいいとトレーナーさんに相談して、そういうこと(抹消)になったんです。以降2週間ノースローになりました」
手術を受けるのか、それとも……
あらためて医者の診断を受けてみると決して芳しいものではなかった。前述したように、肘は平良いわく毎年のように“なにかしら”あったという。過去に平良は背中を痛め戦線離脱することが度々あったが、それは肘をかばってのものだった。
早期の復帰を第一目標としていたが、当然最悪を想定して考えを巡らせた。またDOCKにはトミー・ジョン手術から復帰を目指す田中健二朗と東克樹がおり、彼らの意見は大いに参考になった。そして医者からは次のように言われた。