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肘は「かなり使い古されていた、と」手術を終えたDeNA平良拳太郎に、今永昇太が贈った“粋なプレゼント”とは?
posted2021/07/05 11:01
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph by
KYODO
故郷の沖縄県今帰仁村の高い空の下で小学校1年生から始めた野球。以来ずっと白球を追いかけてきた横浜DeNAベイスターズの平良拳太郎は、今、足を止め自分自身とじっくり向き合っている。
「こんなに野球をしていない時間は人生で初めてかもしれませんね。考えることは多いのですが、あまり考えすぎても仕方がない。ただ今は、現状を受け入れてリハビリをしていくだけです。しかしコレ、本当に治るのかなあといった感じなんですよね」
6月7日、平良は右肘内側側副靱帯損傷によりトミー・ジョン手術を行った。あの日から20日ほどが過ぎ、オンラインで話をする機会をもらった。画面を通して見る平良の右肘はギプスで固定されていたが、治療とリハビリの際はギプスを外して行っているという。
「今はDOCK(ファーム施設)に行って電気治療をしてウォーキングしてアイシングして、また電気といった感じですね。え、可動域ですか? うーん、今は30度ぐらいしか曲がりませんね。術後まだ3週間ぐらいなんですけど、雨の日に痛かったり、昨日よりも曲がらないといったこともあるので、これからトレーニングをしていく過程でいろいろ(問題が)出てくるんでしょうね。まあ覚悟はしていますが」
そう気丈に語る平良の表情は決して暗いものではなく、どこかポジティブな香りが漂うものだった。
「軽くプチッて」今季初登板でのアクシデント
右肘に異変を感じたのは3月28日の巨人戦(東京ドーム)だった。開幕カード3戦目、今シーズン初登板の舞台。この日、平良は驚くべきことに5回までパーフェクトを演じる快投を見せていた。しかしながら6回に大城卓三に初ヒットを打たれると、アウトをひとつも取らぬまま降板してしまう。わずか59球。アクシデントは明白だった。
「5回裏、2アウトで対戦したウィーラー選手のとき、強めに投げたタイミングで軽くプチッてきたんです。今思えば伸びたんだろうなっていう感触で、それが一番最初でしたね」
ウィーラーとの対戦において平良は4球目にこの日最速タイの144キロのストレートを投げ込んでいる。
「オープン戦のときは肘に関しては問題なかったのですが、下半身から連動する腕の振りという部分においてしっくりときていませんでした。しかし開幕では、連動していい感じで腕が振れていた。開幕の緊張もあったと思いますが、逆に良すぎたのが問題だったかもしれません……」
ピッチャーの体は繊細だ。ここで右肘の異変を感じ“怖さ”だけが残ってしまった平良は、腕を強く振ることができず、前述したように次のイニングで降板した。その後、三浦大輔監督や投手コーチ、トレーナーと話し合い、登録抹消することを決めた。ただこのとき平良自身は、それほど重症だとは考えていなかった。