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“大坂なおみの姉”まりが振り返る現役時代「妹には絶対に負けられないと」「ゲームではなく、生きるか死ぬか」〈特別インタビュー〉 

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内田暁

内田暁Akatsuki Uchida

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photograph byGetty Images

posted2021/07/02 11:02

“大坂なおみの姉”まりが振り返る現役時代「妹には絶対に負けられないと」「ゲームではなく、生きるか死ぬか」〈特別インタビュー〉<Number Web> photograph by Getty Images

今年3月に自身のSNSで「現役引退」を発表した大坂まりさん(25)

テニスは「勝つか負けるか、生きるか死ぬか」

 彼女が、テニスを「楽しむことはできない旅」と感じたのは、はたしていつの頃からだったのだろう?

 妹のなおみが、「姉は、テニスをするには優しすぎたのかも」と、微かに寂しそうに笑っていたことを思い出す。妹曰く、二人は、漫画やテレビドラマに出てくる「意地悪な妹と、優しい姉そのもの」なのだという。

 その優しすぎる姉は「テニスをゲームではなく、勝つか負けるか、生きるか死ぬかのようにとらえてしまっていた」と自身のキャリアを振り返る。

 勝負事以上に絵画やダンスを好む生来の気質と、テニスがどうしようもなく有する孤独性がせめぎ合う矛盾のなかで、コートの時間を楽しむことは徐々に難しくなったのかもしれない。

「テニスにまつわる、最高の思い出は?」

 その問いに大坂家の長女は、「たぶんあなたが思うより、はるかに小さかった頃の記憶」だと応じた。

「子どもの頃、父はすごく厳しかった。だからわたしたちは、楽しいゲームを自分たちで決めてコートで遊んでいた。あれは本当に、今でも大好きな優しい思い出」

 彼女が覚えている楽しいテニスの記憶の中では、常に隣に妹がいた。

 年が経ち、その妹の背が遠ざかっていったとき、彼女がテニスから離れたのは自然の流れだったのかもしれない。

引退して「自分の望むことを何でもできる」

 まりが引退した今、なおみは「姉をサポートしながら、二人で一緒にいろいろとやっていきたい」と言った。

 実際に二人はすでに、まりが監修をつとめる連載漫画『アンライバルド NAOMI天下一』などで、共作を生みだし始めている。子どもの頃から絵やデザイン画を描くことが好きで、いつかはポップカルチャーやアート作品を生みだす仕事をしたいと望んだまりにとって、それは夢を実現する一歩でもあるだろう。

「ここからは、自分の望むことを何でもできる。それは胸が躍ることで、同時に、少し怖くもある」と、姉のまりは言う。

 それでも、迷いや恐れを覚えた時には、「テニスを通じて学んだり経験した、今のわたしを形成する多くのこと」が指標になるはずだ。

「これから起こる、楽しいプロジェクトの数々を楽しみにしていてください」

 ソーシャルメディアにアップした、引退報告のメッセージの最後に、彼女はそう記した。

 一つの旅の終焉――それは、新たな旅の始まりである。

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