テニスPRESSBACK NUMBER
突然の現役引退から4カ月 大坂まりに聞く「あなたにとって大坂なおみとはどんな存在ですか?」〈特別インタビュー〉
posted2021/07/02 11:03
text by
内田暁Akatsuki Uchida
photograph by
Getty Images
今年3月に、プロテニスプレーヤーとしてのキャリアに幕を引いたことを表明した、大坂まりさん。
「大坂なおみの姉」として知られる彼女は、なおみ曰く「わたしがテニスを始めた理由」であり、孤独な戦場に身を置く妹が最も心を許す親友であり、そして今、新たなキャリアを歩み始めた若き社会人でもある。
すでに、漫画制作やチャリティなど姉妹での取り組みも始めている25歳は、今何を思い、ここからどこに進むのか?
それらの問いに、英語での書面インタビューで答えてくれた。妹のなおみのこと、二人が共有するビジョンのこと、そしてこれからのこと――(全2回の2回目/前編へ)。
◆◆◆
「人生で一番嬉しい勝利は、15歳の時にお姉ちゃんに勝った時」
4つのグランドスラムタイトルを手にした今も、大坂なおみは、そう断言することをためらわない。
「妹に負けることに対し強迫観念を抱いていた」
姉妹が本格的にテニスを始めたのは、生まれた大阪市からニューヨークに渡った時。姉が4歳、妹が3歳の頃だ。
以降、二人は毎日のように一緒にコートを駆け、ボールを追ってきた。
もっとも、まりさんにとっての「テニスにまつわる最も古い記憶」は、コート上のそれではなく、コート外での出来事だという。
「わたしが覚えているのは、ニューヨークに居た頃、ジュニアの試合が始まる前にいつも鬼ごっこをして走り回っていたことです。だから母は、試合前に私たちが疲れちゃうのではと心配していました」
毎週末のように試合に出て、試合がない日は、二人で対戦するのが姉妹の日常となる。それは妹にとって、姉を倒すという明確な目標をもって試行錯誤を繰り返し、自身の成長を実感できた日々。
ただ家族は、もう少し複雑な思いも抱いていたようだ。
「わたしは、妹に負けることに対し強迫観念を抱いていたので、なおみが相手の時は良いプレーをしていたと思います。彼女はわたしとの対戦では、混乱しフラストレーションを溜めていました。だからある時期から、父はわたしたちが試合するのを嫌がるようになったように思います」
まりさんにとって、子どもの頃のなおみはコートに立っていても、やはり「年下の姉妹」だったのだろう。