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J3最下位→J2昇格→昨季前半戦首位→今季J2で18位…“活躍した選手を引き抜かれる”ギラヴァンツ小林伸二監督の苦悩と理想の筋道
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph byEijinho Yoshizaki
posted2021/06/30 17:00
ギラヴァンツ北九州を率いる小林伸二監督。昇格請負人とも称される名将は試行錯誤を繰り返している
いっぽう攻撃に転じれば、「短く刻む」(小林監督)という言葉にあるようにショートパスを徹底して活用。繋ぐだけではなく「裏を狙う」という点を徹底したがためにゴールも多く生まれた。それは2019年J3第7節ブラウブリッツ秋田戦あたりから試合でも真価を発揮しはじめたものだった。短いパスでクローズからオープンの状況を次々と作る絵だけでも見ものだった。
J3時代からの戦術の継続と整備に取り組み、そして大掛かりな補強なしでも躍進できる。そういったことの証だった。昨季の躍進はJ3からJ2に昇格しても誰一人として上のクラブから「引っこ抜かれなかった」のだ。J3の時代に獲得した選手、J2やJ1下位クラブで出場機会に恵まれていなかったレンタル選手で成し遂げたものだった。
11人が移籍、13人が入団という難しさ
しかし今はその姿はない。ファーストディフェンスのスピードは落ち、ボールをキープした選手が孤立する場面も目立つ。
なぜか。
はっきり言って、シーズンの半分が過ぎた今、そのことを言っても仕方がない。
しかし、無視もできない。
2020年シーズン末から選手が11人が他クラブからオファーを受けて移籍、今季は13人が入団した。
「引っこ抜かれた」のだ。戦力外や引退ではない。活躍によりレギュラークラスに対して資金力のあるクラブから声がかかった。
うち4人はレンタルバックで7人は完全移籍。小林監督によると移籍金を得られたのは「3選手」だったという。レンタルバックの選手については「所属クラブが戻ってこいと言えば、いっぱい積まないと無理」だとも。
残った昨季のレギュラークラスは4人。DFラインに3人、MFに1人だ。
3月末に話を聞いた際には、この時の苦悩を包み隠さず話していた。