女子史上初の1500m代表へ　道はまだ残されている

　田中、卜部ともに参加標準記録を突破できなかったが、東京五輪への道が閉ざされたわけではない。7月1日時点で世界ランキングで45位以内に入っていれば、ふたりともに1500mでの東京五輪出場が決定する。

　レース前、横田コーチは、卜部に自らがロンドン五輪の出場権を獲得した時のことを話してくれた。横田は当時、五輪に出場できるかどうか微妙な状況で大阪での日本選手権に臨んだ。「（卜部と）まったく同じシチュエーションだよ」と言い、最終選考に残って五輪出場を決めた縁起のいい競技場だと教えてくれた。その経験談は最終選考を待つ卜部にとって大きな希望になっている。

「これからは東京五輪でベストのパフォーマンスをするために1日1日を大事にトレーニングにフォーカスしていきたい」

　卜部は五輪出場を信じて、力強い言葉で締めくくった。

　日本の女子選手でまだ誰も見たことがない五輪での1500mの景色を見たいと思って走り続けてきた。小学3年で陸上を始めた時の夢は、手が届くところまでやってきている。正式に決定するまでドキドキして落ち着かず、不安な気持ちにもなるだろうが、その時はまた横田コーチが「大丈夫、イケるよ」と声をかけてくれるはずだ。

　吉報が届けば、卜部はもちろん、田中も五輪で1500mを走る日本初の女性ランナーとして歴史に名を刻むことになる。

ラストスパートで駆け抜ける田中希実と卜部蘭　©Asami Enomoto