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“なでしこのラッキーガール”塩越柚歩23歳「あっという間」に急成長→五輪メンバーに… 知られざる1年半の足跡
text by
佐藤亮太Ryota Sato
photograph byJFA/AFLO
posted2021/06/24 11:01
なでしこジャパンの東京五輪メンバー切符をつかみ取った塩越柚歩。23歳は2大会ぶり出場のチームに化学反応をもたらすか
「皇后杯にぶつけよう」
この思いが大きな転機となった。
無敗のINAC神戸相手に輝いた
皇后杯2回戦・常盤木学園高校戦で先発した塩越は1ゴールをマークすると、続く3回戦と準々決勝でスタメン起用された。
そして準決勝。相手はこの年リーグ・カップ4戦全敗のINAC神戸レオネッサ。決勝進出への大一番で塩越が輝いた。
トップ下から左右両サイドと3つのポジションを回遊しながら、ここぞの場面ではゴール前でドリブルを仕掛ける。そして、正確なクロスと味方に優しいスルーパスを繰り出す。その動きは、まさに機を見るに敏だった。
さらにセットプレーでは何度も得点の予感を抱かせるボールを放つ。2-2で迎えた77分、左コーナーキックからDF南萌華の決勝弾をアシスト。逆転勝利に導いた。
「チームの雰囲気が良かったのと自分自身、ボールフィーリングが良く、そのことが得点につながりました。みんな最後まで頑張ったおかげで生まれた結果です」
試合後のミックスゾーンで塩越のクールな表情から笑みがこぼれた。
「自分がというより、みんなで穴埋めを」
加えて、塩越の躍動ぶりには森栄次監督(現:総監督)の敷くサッカーとの親和性の高さがあった。
森監督のサッカーは、フィールドプレイヤー全員が試合の流れ、状況を見て共有しながら、攻守において支え合う相互補完型のスタイルである。そこで塩越のユーティリティ性がいかんなく発揮されたのだ。
「森監督のサッカーがみんなに定着しつつあるのと、自分の持つサッカーが森監督のパスサッカーにフィットしていることはもちろんあります。みんながみんな流動的に動く、これがいまのサッカーで、森監督はそのポジションに誰かがいればいい、ポジションにこだわらないサッカー。自分がというより、みんなで穴埋めをしています」
塩越はこう熱っぽく話していたことがある。