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目の前で“田中希実が日本新記録ゴール”から1年…26歳卜部蘭が「五輪で結果を出すこと」にこだわる理由
posted2021/06/25 11:00
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
Asami Enomoto
6月24日からいよいよ日本選手権が始まる。短距離の100mをはじめ陸上のほとんどの種目が、ここで東京五輪代表選手が決定する。一昨年の日本選手権で女子800mと1500mの二冠を達成した卜部蘭にとっても、東京五輪出場を賭けた非常に重要なレースになる。
卜部は現在、新谷仁美(積水化学工業)ら日本のトップクラスの選手が在籍する「TWOLAPS」(主宰:横田真人氏)というクラブチームで練習している。
実業団ではなくクラブチームを選択した理由、東京五輪への想い、最強ライバル・田中希実選手のこと――。日本選手権を控えた卜部が赤裸々に語ってくれた(全2回の1回目/#2に続く)。
最強のライバル・田中希実をどう見ている?
1500mの東京五輪参加標準記録は4分04秒20。卜部の自己ベストは、昨年8月のゴールデングランプリで記録した4分11秒75だ。だが、この時は、まったく喜べなかった。20歳(当時)の田中希実が4分05秒27で14年ぶりに日本記録を塗り替えて優勝したからだ。
「自己ベストを更新しても全く嬉しくなかったのは、初めての経験でした。でも、そこで周囲の方に喜んでもらえる結果と記録を出したいというモチベーションが高まりましたし、やっぱり優勝しないと嬉しくないと気づくキッカケにもなりました」
卜部の前を走った田中は、すでに5000mでの東京五輪の出場内定を得ており、1500mも非常に強い。東京五輪出場を狙う卜部の最強のライバルと言えよう。
「田中さんは、中距離界を大きくしていく上で大きな存在ですし、私個人にとってはすごく刺激になる存在です。さすがに、目の前で日本記録を更新された時はすごく悔しかったです。
でも、田中さんが日本記録を出した時、『私もいける!』という思いがより強くなったんです。100mで桐生(祥秀)君が9秒台を出してひとつ越えた時に、他の選手も続くような雰囲気があったじゃないですか。そういう意味でも、田中さんはすごく大きな存在だなって」
日本女子で初「1500mで五輪」を叶えるために
毎回、田中には強烈なラストスパートを見せつけられているが、今回の日本選手権はそこで離されるわけにはいかない。そのためにペースとスピードを軸に練習してきた。
「1つポイントになるのが、1周(400m)66秒のペースです。トレーニングでも400mのインターバルでそのペースを刻んで体に染みこませたり、それよりも速いペースで走っています。66-66-66のイーブンで行き、ラストを45秒に上げると4分03秒になります。世界的にみてもラストを45秒に上げられる選手はなかなかいない。ラストでどこのポジションにいるのかも大事ですけど、最後に45秒に上げられるかどうかが東京五輪に向けての大きなポイントだと思っています」