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「自分では苦労したとは思っていません」“消えた天才”とも呼ばれた西武・岸潤一郎に高まる期待…昨年夏にアドバイスを求めた選手とは?
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byKYODO
posted2021/06/18 11:02
ルーキー若林楽人の故障もあり、チャンスを得た岸潤一郎。6月13日中日戦では先頭打者ホームランを放った
レギュラー獲得に向けて日々、奮闘している岸に今後の目標を聞いた。
「数字とかではなくて、とにかく1試合、1打席を大切に。結果を残してライオンズが勝てるように。自分ができることを精いっぱいやるだけです」
明徳義塾高校時代、甲子園の申し子と呼ばれた。1年の夏、2年の夏、3年の春・夏と4度、甲子園に出場した。1年夏はベスト4、2年夏3年春はベスト8。3年の夏はその年、優勝した大阪桐蔭と対戦して敗れたが、3年秋の国体では頂点に立った。第10回U-18アジア選手権の日本代表にも選出され、準優勝に貢献。しかしその後、大学に進んだが右ひじの故障で野球を断念。大学も辞めた。
その後、四国アイランドリーグplusの徳島インディゴソックスを経て、2019年ドラフトで西武に8位指名を受けたが、一時は「消えた天才」と言われ、テレビ番組で特集された過去も持つ。
苦労人と言われることについて、本人はどう感じているのか尋ねた。
「うーん、そんなことないとは思うんですけどね。苦労人って言われているのは知っていますけど、そんなに特に自分では苦労したとは思っていません。なるようにして今に至ったという感じです。ただ、高校のまま順調に行っていても、今のように野球ができているかはわからないですし」
日々、緊張の毎日だとインタビューの冒頭で話していたが、その表情はとても充実しているように見える。
「ほんと、急がば回れじゃないですけど、野球をやめた時期があって、独立リーグを経て、こうしてライオンズに入ってよかったんだと今は思っています」
今季のライオンズはレギュラークラスの選手の故障が多く、前半戦は若手の活躍で26勝27敗と1試合の負け越しで踏み止まっている。
今後、故障者の復帰や、虎視眈々と外野のレギュラーをねらう若手が岸のあとを追いかけてくるだろうが、この正念場を乗り切り、レギュラーの座を確固たるものにできるか。注目していきたい。