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中継ぎエースがなぜ先発転向を直訴? 西武・平井克典(29)の覚悟とは…「若手の頑張りを守ってあげなきゃいけない」
posted2021/04/27 06:00
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph by
Sankei Shimbun
2017年に入団して以降、ずっと中継ぎの必勝パターンとして活躍。19年には81試合に登板し、球団最多登板記録を更新した平井克典が、今シーズンは先発として安定したピッチングを見せている。
開幕から4試合に登板し、4月11日までに3連勝。防御率1点台を保ち、リーグ全体の投手成績でも上位に入る数字を残してきた。先発5戦目となった4月25日の東北楽天戦こそ初めて敗戦投手となったが、2回に5点を失った平井はその後、立て直し、先発の責任回数とも言える5回と3分の1イニングスを投げている。
今や開幕投手の高橋光成と並び、首脳陣とファンの信頼を得ている先発ピッチャーと言っていいだろう。
先発転向を直訴した理由
「先発に挑戦させてください」と、辻発彦監督、西口文也投手コーチに転向を直訴したのは昨秋のキャンプ中だった。辻監督、西口コーチともに「結果を残して自分の力で先発を勝ち取れ」と返答したという。秋季キャンプ、オフと走り込みの量を増やし、長いイニングスを抑えるためのノウハウを実績のある先輩たちに聞いて学んだ。
「これまで中継ぎとして起用してもらっていたにもかかわらず、自分から先発に転向したいと言い出したんですから、言った以上は絶対に結果を残さなければならないと思っています。僕にとっては未知の数字ですが、2桁勝利を目指します」(平井)
というのも、最多登板記録を更新した翌年となる2020年シーズン、平井は前年度の活躍とは打って変わり、思い通りの投球ができずに苦しんでいた。勝ち越し打を許す場面も多く、本来の平井とは程遠い状態だった。自分自身に腹を立て、試合後は誰とも顔を合わせないよう、真っ先にロッカールームをあとにする日もあった。
自分の投球を取り戻すために必要なことは何か――。考えに考え、強い覚悟のもと、自身を崖っぷちに追い込んで先発挑戦を決意した。