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「自分では苦労したとは思っていません」“消えた天才”とも呼ばれた西武・岸潤一郎に高まる期待…昨年夏にアドバイスを求めた選手とは?
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byKYODO
posted2021/06/18 11:02
ルーキー若林楽人の故障もあり、チャンスを得た岸潤一郎。6月13日中日戦では先頭打者ホームランを放った
「試合で結果を出せるように、ファームでも取り組んでいました。昨年の取材でも何度かお話させてもらっているんですけど、山川(穂高)さんにアドバイスいただいたこと。それを受けて、しっかり取り組んでいました」
昨年7月、初めて一軍昇格を果たした際に、岸は山川に質問をぶつけた。
「自分から相談に行ったんですけど、けっこう勇気がいりました」(岸)
ルーキーがチームの主砲にアドバイスを求めるのは、容易なことではない。それほど岸にとっては切実だった。
「山川さんからは『基本的なことがまだできていないのに、形ばかり気にしている。まずは強く振ることから始めたほうがいいよ』と言われました」
それまでの岸は、技術のことばかり考え、フォームも試行錯誤していた。そんな岸にとって山川の言葉は岸本来の、思い切りの良さという長所を思い出すきっかけとなった。
「そうか、まずはフォームうんぬんの前に強い打球を打てることが大事だな」と、そのアドバイスがすとんと腑に落ちた。
「山川さんみたいに角度をつけた打球ではなくても、まずは強く速い打球が打てるように練習しようと思いました」
強い打球を打つという意識を持ったことで、練習の際のチェックポイントもおのずと変わった。
二軍生活で改めて学んだこと
昨年は二軍で54試合に出場した。
「終盤、けっこう自分でもいい感じで打てていたので、それをどう継続するかというのが次の課題になりました。好不調の波はどうやったら改善するのかということも考えましたけど、でも基本は初球から強く振ることを頭に入れていましたね」
二軍では守備や走塁など基本的なプレーも、改めて学ぶいい機会となったと岸は振り返る。
「佐藤友亮さんが外野守備走塁担当コーチだったので、一緒に練習する時間が長かったんです。守備がより安定するにはどうしたらいいかと一緒に考えてくださいました。たとえば僕は肩が長所だと思ってきたんですけど、肩の強さを生かしたまま、どうやって正確に投げるかという練習を積みました。
あとは試合でミスをしたとき、なぜそういうミスにつながったのか。走るときのスタートにしても『こうなっているから一歩目がスムーズに出ていないよ』など、いろいろアドバイスをいただけたのは大きかったですね」
肩の強さを生かすためには、バックホームやランナーの進塁を刺す際にどうしたらストライクの送球を投げられるのか。無駄なステップを減らすこと、体重移動の方法などを繰り返し練習した。
多くの時間を二軍で過ごした2020年は、岸にとって決して無駄にはならなかった。