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鈴木誠也ら主力が離脱…コロナ直撃から「広島カープはどう戦ってきたか?」番記者が見た“選手たちの苦悩”
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byKYODO
posted2021/06/14 17:25
復帰早々ブランクを感じさせないプレーを見せた鈴木誠也だったが、本人は自分の体の変化を感じていた
再開初日の西武戦は終盤に追い上げて同点に追いつき、28日ロッテ戦は16安打10得点で勝利した。コロナ禍で出場機会を得た若手の奮闘ぶりが目立った。
ヤクルトもそうだった。シーズン序盤、ベテランの青木宣親と内川聖一の2人を欠いた中でも、7勝3敗3分けと勝ち越した。離脱した選手の数が多いものの、一縷の望みを抱いた広島ファンは少なくなかったかもしれない。
だが、広島は翌29日のロッテ戦から連敗した。登板機会を得た先発陣の崩れた投球内容とともに、淡い期待も崩れていった。
5月終了時点で、広島は17勝22敗6分け。主力不在の中、リーグ順位が5位に落ち、借金が増える状況が首脳陣の焦りとなっていたように感じる。コロナ禍による離脱者を出した30日ロッテ戦までの6試合は、2勝3敗1分けだが、“勝てなかった”結果が焦りに拍車をかけた。毎日のように変わる打順や成功しないヒットエンドランなどの策からも、焦りが空回りしていように感じられた。
広島に戻って迎えた日本ハム戦3連戦の2戦目(2日)に、前日二軍で実戦復帰したばかりの菊池涼を一軍に昇格させた。首脳陣の期待に応えるように走攻守に渡る活躍で勝利に貢献した。首脳陣にとっては、主力の存在感の大きさを改めて感じた試合となっただろう。
森下、高橋が楽天戦で復帰するも……
球団独自の濃厚接触者として、隔離期間を過ごした森下、高橋昂を5日、6日の楽天戦で先発復帰させた。
保健所の指導の下、個別での練習を許可されていたとはいえ、隔離期間中は調整強度も限られた。実戦登板からは3週間以上空いている。最終手段とも思われた一手は、5月30日までのロッテ3連戦で先発した3投手をそろって登板翌日に出場選手登録を抹消したことで既定路線となった。
未体験のマウンドでも、森下は驚くべき投球を見せた。6回まで89球、4安打1失点。パ・リーグ首位の楽天、先発はメジャー帰りの田中将大を相手に、互角以上に投げ合った。
だが、中継ぎ陣の登板過多となっていたチーム事情による焦りからか、首脳陣は一軍登板中23日の右腕に2点リードの7回も続投を指示した。結果、先頭から連続四球を与えるなど、1死二、三塁で降板。そして、その回に追いつかれた。試合終盤に楽天に突き放され、終わってみれば大敗と、コロナ禍から始まった悪循環にはまるチームを表すような試合だった。
半ば強行で実戦復帰した主砲・鈴木のスゴさ
菊池涼が復帰した2日の勝利以降、小園や森下らを再昇格させても、黒星が続いた。週末の6日には、週明けからの合流が予定されていた鈴木誠を前倒しして合流させた。
鈴木誠は5月31日に活動再開となり、再開2日目の6月1日に初めてスパイクを履いたダッシュを行ったばかりにもかかわらず、2日には二軍戦に出場した。週末に広島のウエスタン・リーグ公式戦がない日程に加え、4日以降の降水確率の高い日に半ば強行で実戦復帰したのだ。