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号泣する桜庭和志、高田延彦のハッピーエンド、伝説のミルコvs.ノゲイラ… カメラマンが目撃したMMA東京ドーム大会の衝撃の瞬間
text by
長尾迪Susumu Nagao
photograph bySusumu Nagao
posted2021/06/11 11:03
MMAとして初めて東京ドームで行われたRRIDE.1のメインイベントに出場した高田延彦(左)とヒクソン
PRIDE GRANDPRIX 2003 決勝戦
エメリヤーエンコ・ヒョードルvsミルコ・クロコップのヘビー級タイトルマッチに、シウバ、吉田秀彦ら4人の強豪選手が勝ち残った、ミドル級のトーナメントの準決勝と決勝がラインナップされていた。しかし直前にヒョードルが怪我で欠場。ミルコとノゲイラのヘビー級暫定王座決定戦に変更された。だが、チケットの売れ行きが下がることはなかった。最終的に入場者数は6万7451人で、超満員札止めになった。セミファイナルに登場したミルコは、下馬評通りの強さをみせ、ノゲイラを打撃で圧倒した。1ラウンドの終わりには、ハイキックでダウンを奪うが、惜しくもタイムアップ。誰の目から見ても、ミルコの勝利は間違いないと思えた。私も撮影の照準をミルコに合わせる。
2ラウンド開始早々、一瞬の隙をついてノゲイラはテイクダウンに成功する。マウントからパンチを落とし、流れるようにミルコの右腕をひねりあげた。腕十字が完璧に決まり、ミルコはタップするしかなかった。東京ドームの観客、360度からの驚嘆、絶叫、歓喜、熱気がリングに押し寄せてきた。
<リングが揺れるような錯覚、私も含め撮影慣れしているカメラマンが、言葉にならない声を上げていた。私は連写モードでシャッターを押し続けるが、途中で止まってしまった。故障か? と思いカメラを見ると、フイルムカウンターが36を過ぎたところで空回りしている。フイルムカメラは最高で36枚しか撮影できない。興奮状態の私は、フイルム切れに気づかずに、シャッターを押し続けていたのだ。こんな経験は後にも先にもこのときだけ。それほど凄い奇跡の逆転勝利だった>