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3カ国語で答えるフェデラー、言い返すシャラポワ…大坂なおみが拒否した「記者会見」では何が起きているのか?
text by
内田暁Akatsuki Uchida
photograph byAFLO
posted2021/06/10 11:03
大坂なおみが拒否したことで注目された“記者会見”。これまで選手と記者はどんなやり取りをしてきたのか?
この言葉になおも記者が食い下がると、コンタは「いい加減に、上から目線で物を言うのはやめて」と突き放す。最終的にこの時は、司会者が割って入り次の質問者へと進めたことで、事態はなんとか収拾した。
ウィンブルドンの会見と言えば、シャラポワと記者の間でこんなやりとりもあった。
シャラポワが、ロシアの選手たちと不仲であることを、ことさら強調するような質問を受けた時のこと。
「あなた、『The Sun』の記者? ああ、『Daily Mail』なのね。こういうことを聞くのって、いつもあなたたちのどちらかよね」
シャラポワの言う『The Sun』と『Daily Mail』とは、いずれも英国の代表的なタブロイド紙。格調高いウィンブルドンの会見室には、ゴシップネタを鵜の目鷹の目で待ち構えている記者たちもいる。
これらタブロイド紙によるテニス界の最大の被害者は、スコットランド出身のアンディ・マリーかもしれない。
誤って伝わった報道に苦しめられたマリー
話は2006年までさかのぼる。サッカーのワールドカップ開催年のこの年、『The Sun』が、「イングランドと対戦する国なら、それがどこでも応援するとマリーが発言した」と報じたのだ。実際にはこの文言は、イングランド出身の人気選手のティム・ヘンマンとの対談の中で、シニカルなジョークとして口にしたもの。だが、文脈から切り離された言葉は一人歩きし、イングランド中に火を放った。
「ウィンブルドンのロッカールームに行くと、僕宛の手紙が届いているという。その文面の多くは『お前がプレーする全ての試合で、対戦相手を応援する』というような内容だった」
後にマリーは、当時の騒動と心に負った傷を、包み隠さず明かしている。この時の彼は、まだ19歳だった。その後、英国のナンバー1選手となり、世界の『ビッグ4』と称されるメンバーの一人になってなお、この騒動はマリーのキャリアに影を落とす。