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3カ国語で答えるフェデラー、言い返すシャラポワ…大坂なおみが拒否した「記者会見」では何が起きているのか?
text by
内田暁Akatsuki Uchida
photograph byAFLO
posted2021/06/10 11:03
大坂なおみが拒否したことで注目された“記者会見”。これまで選手と記者はどんなやり取りをしてきたのか?
ジョコビッチは記者たちに“チョコ”をふるまうことも
そのような双方向的関係を、選手の方から築こうとしてくれることもある。ノバク・ジョコビッチは一時期、全豪オープンやATPファイナルズを制した後の会見で、チョコレートを記者にふるまうのが慣例だった。
「このフレイバーが僕のお勧めだよ」「オーガニックで健康にも良い。僕が保証するよ」
チョコレートと共に言葉も交わし、誰もが笑顔に包まれた。
とはいえ選手と記者たちは、そんな甘い関係ばかりではない。皮肉にもジョコビッチこそが、記者からの厳しい質問に、最もさらされてきたトップ選手だと言えるだろう。まだ10代の頃、ジョコビッチが英国籍に変えるとの噂が流れた時には、「その件については質問しないように」と記者たちへの通達があった。
世界1位になってからは、ラケットを投げるなどのコート上の素行が、記者からの糾弾の対象になる。近いところでは今年2月の全豪オープンで、選手のためにと大会サイドに出した要求が、「わがままだ」と揶揄された。
それらの騒音にもじっと耐え、圧巻の強さで大会を制した彼は、優勝会見で「事実を確認もせず、不当に批判する人の声を聞くのは気分の良いものではない」と、メディアの姿勢を批判する。さらには「この手のことには、もう慣れた。僕の人生で初めて起きることではないし、最後でもないだろう」と、蓄積された不満も打ち明けた。
ジョコビッチ以外にも、記者の高圧的な態度に対し、選手が反撃した例はある。
「これ以上言うことはないわ」記者に反撃することも
思い出されるのは、一昨年のウィンブルドン。英国女子ナンバー1選手のジョハンナ・コンタが敗れた後の出来事だ。この時の会見で記者の一人が、コンタが落としたポイントやミスしたショットを子細に連ね、「これらの大事な場面で、もっと良いプレーをすべきではなかったか?」と問うたのだ。
目に困惑と微かな怒りを浮かべるコンタは、感情を抑制しつつも毅然と言い返した。
「そんな酷いやり方で、あらさがしをする必要があるとは思えない。私はあなたたちに対して常に、正直に感じたことを言っている。その答えが気に入らないなら、別にそれで構わない。私は、自分のテニスを信じている。自分の戦い方を信じている。あなたの質問に対し、これ以上言うことはないわ」