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錦織圭「またコイツに負けたっていうのはちょっと…」24歳ズベレフが“2年ぶりベスト8”を阻止できた3つの理由
posted2021/06/07 17:04
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph by
Hiromasa Mano
「どう頑張っても突破口が見つからなかった」
錦織圭はアレクサンダー・ズベレフに完敗。完全復活を期して臨んだ全仏は4回戦止まりだった。〈あそこでこうしていたら、という場面はあったか〉と問われると「チャンスは一つも思い浮かばない」と顔をしかめた。
「ダウン・ザ・ラインへの早い仕掛け」に苦しむ
第1セットの攻防がすべてだった。
0-3のスタートからブレークバックで3-3に追いついたが、4-5からのサービスゲームでブレークを許す。両者ともラリーで優位に立とうと積極的に攻めた。劣勢から1本で攻勢に転ずる場面も目立ち、極めて質の高いラリーの連続だった。しかし、守備でも攻撃でも、わずかにズベレフが上回った。
焦点のひとつはダウン・ザ・ラインをめぐる攻防だった。序盤のズベレフはダウン・ザ・ラインへの仕掛けがとびきり早かった。両者は前哨戦のマドリードとローマで続けて対戦、錦織は連敗を喫している。「マドリードではむちゃくちゃ打ってきていた。ローマではちょっと抑えていてラリーも長く続くようになり、チャンスが生まれた」と相手のプレーを分析したうえで、錦織は「なにかしてくる」と警戒していた。その一つがダウン・ザ・ラインへの早い仕掛けだった。
錦織にとってもダウン・ザ・ラインは生命線。これを繰り出すタイミングと抜群の精度が彼の攻撃を支えている。プレーに勢いをもたらすという意味では、エンジンの役割を担うショットだ。だが、ズベレフに先にこれを打たれた。
相手のバックのダウン・ザ・ラインは錦織のフォア側に突き刺さる。フォアは弱点ではないが、グリップの握りが厚いため、走らされるとクリーンヒットできる打点が限られる。そうして甘くなった返球をたたかれた。先に仕掛けなくてはやられる、と焦りもあったのか、錦織のダウン・ザ・ラインが精度を欠く場面もあり、ときにはコースを狙いすぎたミスに、また、あるときは相手のカウンターの餌食になった。