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乾貴士の活躍で小都市エイバルと日本がつながった縁… 降格も“ロマンあふれる町とスタジアム”の光景は美しかった【激写】
posted2021/06/02 06:00
text by
中島大介Daisuke Nakashima
photograph by
Daisuke Nakashima
6年前にナンバー本誌に掲載された記事を読み返すと、同行取材したライター豊福晋氏の一節が目についた。
<入り口には立派な名前が掲げられているけれど、町にはホテルがひとつしかないから、人々はここを「ホテル」と呼んでいる>
コロナ禍で行われたリーガ・エスパニョーラ1部20-21シーズンが幕を下ろした。
今季、乾貴士と武藤嘉紀が所属し、7シーズンにわたり1部での戦いを続けてきたSDエイバルの最下位での降格が決定した。
刹那、初めて訪れたエイバルの地で取材を通して触れ合った人々のことが懐かしく思われ、積み重なった雑誌の山から掲載号を探し出した。
6年前、初めて山間の町に訪れて
2015年8月末、バスク州ギプスコア県の山間の町を初めて訪れた。
ナンバー886号に掲載された乾貴士のインタビュー記事の撮影のためだった。
その夏、2万7000人の住民の話題は、前シーズンの18位という結果によって2部を戦うことが決まっていた我がチームが、経営難によるエルチェの降格処分を受け、15-16シーズンを1部で戦うことになったこと。そしてそのチームが、クラブ史上初の移籍金を払って日本人選手を獲得したことだった。
バルセロナよりビルバオ空港に着陸後、市内より出発したバスは山々の間を縫うように高速道路を進む。車窓を流れる初めて目にする景色には、放牧された牛や羊が目についた。
初めての土地を訪れるバスでの移動は、いつも不安と期待が混ざり合った様な感覚を込み上げさせる。
飛行機や電車の旅とは違った不思議なものだ。
1時間弱の旅程を終え、バスは終着のエイバルに辿り着く。