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引退どころかカタールW杯出場へ意欲 超人ブッフォン43歳が残した数々の伝説と“あるある”
posted2021/06/02 17:00
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Getty Images
ユベントスでプレーする最後の夜だった。
5月19日、GKジャンルイジ・ブッフォンはユーベでの自身685試合目にあたるコッパ・イタリア決勝戦に出場し、2-1で同タイトルを勝ち取った。個人通算タイトルは23個に積み上がった。
表彰式の前に、長年の戦友である主将キエッリーニがキャプテンマークを巻いてくれた。「優勝トロフィーを掲げるのはジジ・ブッフォン、アンタだ」
“不世出の鉄人”ゴールキーパーは金色のトロフィーを掲げ、仲間たちと子どものようにはしゃいだ。
この夜、サッカーの歴史がまた1ページめくられた。
ユベンティーノにとってブッフォンは人間国宝
「何事にも終わりはくる。自分が重荷になりたくない」
5月11日、ブッフォンは中東メディア『beIN SPORTS』のインタビューに応える形で、今季限りでユベントスを去ることを明らかにした。
すぐに自身のSNSアカウントでもメッセージを伝えた。
「俺はユーベにすべてを捧げてきたし、ユーベからはそれ以上のものを与えてもらった。ユーベは俺にとっての家族そのもので、どれほど感謝してもしきれない。だが、始まりがあれば終わりがくる。もう数カ月も悩んだ末に出した結論だ」
地元紙は春先からもはや来季の契約更新はないだろうという記事を出していたが、いざブッフォンがいなくなるという事実を、どう捉えたものか。
なにしろ、ユーベが大枚1050億リラを払ってパルマから呼び寄せたのが2001年。20年前の話だ。パリの空気を吸いに出かけていた1年を除けば、ユベントスのゴールマウスにはいつも髭の濃い世界一のGKがいた。
ユベンティーノにとって、ブッフォンはレジェンドどころか人間国宝だろう。
ユーベとの別れは2度目だ。
2018年の春、CL準々決勝でR・マドリーに苦杯を嘗めた失意と、前年のロシアW杯予選敗退ショックを受け、ブッフォンはユーベとの契約を延長せず、2017-18シーズン限りでの離脱を発表した。
私はベローナとのセリエA最終節が見納めかと思い、トリノへ取材に行った。
満員のアリアンツ・スタジアムには、別れを惜しむ手製メッセージが何百と掲げられ、ゴール裏のいかつい野郎たちが野太い声で男泣きに泣いていた。
もはや趨勢決した勝ち試合の後半途中、アッレグリ監督(当時)の粋な計らいによって、ブッフォンは第3GKピンソーリオと交代。大観衆からのスタンディング・オベーションでグラウンドを去った。