すべての試合にベンチ入りはしているが、「勝つために必要な選手」と監督から選ばれていないという実感があった。シーズン終了まであと3カ月ある。モチベーションをどう保つのか、苦しい時間が続くだろうと思った。

「過去、どのチームでも試合に出られない時期は経験している。そんなときは練習で頑張れば、チャンスは来ると思えたし、実際にチャンスが来て、先発復帰できた。だけど、今回は少し違う。監督からは見てもらえていないという感覚があった」

　岡崎に気を使ってくれているんだろうなと思わせる監督の振る舞いが歯がゆく、悔しさと惨めさが湧いてくる。

「自分が試合に出て残留できないのと、試合に出なくても残留できるのと、どっちがいいんだろうと考えたりもしましたね。もちろん、試合に出て残留できることが最高なんだけど」

Jリーグで活躍できても「悔しさは晴れないだろうなぁ」

　監督の眼が自身に向かないという現実は、チームに居場所がないような感覚だったかもしれない。それでも、残留に向かうチームの和から離れるわけにはいかず、空元気で日々を過ごした。引退後のことについて考える時間もあった。それでも不思議なことに、「Jリーグへ戻って……」という気持ちにはならなかったという。

「この悔しさを抱えたまま、Jリーグでプレーできるのかな。Jリーグへ戻って、たとえば活躍できたとして、それで復活と言ってもらえても、僕の悔しさは晴れないだろうなぁ。まだまだヨーロッパ、しかもプレミア、ブンデス、セリエA、ラ・リーガの4大リーグでプレーしていないと、見返せないでしょう？　いつかJリーグでプレーしたいと思ってはいるけれど、ヨーロッパで引退する覚悟じゃないと、見返すことはできないんじゃないかって思うんです」

2月13日対セビージャ戦を最後に先発の場も失われた　©Getty Images

　ラ・リーガ1部での初挑戦は25試合出場（先発14試合、出場時間1217分）1ゴールで終わった。記録として残る数字は、正直物足りないものだ。「岡崎はスペイン1部では通用しなかった」と言われても致し方ないだろう。それを認めたうえで、「でも、僕個人としては、やれるという手ごたえもあるんです」と岡崎は言う。

　あと身長が数センチ高ければ（それだけジャンプができれば）、決められたシュートもあった。欧州で活躍するFWたちとの身体能力の差は歴然とある。それでも、欧州でストライカーとして活躍するという野心は今もなお消えない。

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