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岡崎慎司35歳が挑んだ“スペインでの2年間”「ヨーロッパで引退する覚悟じゃないと、見返すことはできない」
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byGetty Images
posted2021/06/02 17:02
5月22日に今季最終節を終えて、2部降格が決まったウエスカ。岡崎慎司はクラブを去ることを自身のSNSでいち早く報告した
ある決断に「あれはミスだった」
シーズン中に下したある決断について、「あれはミスだった」と岡崎が明言した。それは新監督就任後にさかのぼる。
「ラファ・ミルはのびのびとプレーしているから得点も獲れている。でもそのぶん、守備陣に負担がかかってしまい、失点が減らないんだと思う。だから僕がラファ・ミルのサポート役に回るほうがチームにとってプラスになると思った」
詳細は違うが、レスター時代のジェイミー・ヴァーディと自身とのコンビネーションをイメージしていた岡崎は、ポジションを下げつつ攻守に渡り、チームを廻すプレーをしようと考えたのだ。実際、そのプレーがプレミアでは評価されて居場所があった。けれど、岡崎はそれが嫌だった。
「どんなに献身的な守備を評価していると褒められても、結局ゴールを獲らないFWはすぐに外されてしまう。守備や汗をかくプレーも続けながら、かつ得点も獲れるストライカーを目指す」
何度もレスターからの契約延長の打診を断り、移籍を模索し続けた。「30代の選手が給料も高くなる契約延長を断るなんて!」とクラブ関係者は驚きを隠さなかったというが、自身の可能性に賭けたいという岡崎の信念は変わらなかった。
レスターの最後のシーズンで、自身の役割を才能あるMFの選手が担う様子を目の当たりにし、「やっぱりストライカーとして」という想いが募る。満を持しての移籍を果たし、センターFWとしての生きる道を歩んだ。
というのに、結局、スペインでもイングランドと同じ決断を下すことになった。そして、岡崎の思惑通り、彼がサポートすることでチームもうまく回り始める。けれど、そのポジションは本職のMFが担うことになり、岡崎の居場所がなくなってしまった。レスター時代とは違い、指揮官は岡崎のプレーを評価しなかったのだろう。
「自分はストライカーだからという気持ちのまま、やり続けるべきだったという気持ちはあります。でも、しょうがない」
苦しんでいるチームの状況が見えて、改善すべき術がわかってしまったら、無視をするわけにはいかないのは、岡崎の能力のひとつであり、それが評価されてきたから、今の彼がいるのも動かしがたい事実だ。
欧州での選手生活は「いばらの道」だった
足も遅く身体能力は低い。卓越したドリブルなどの技術も持ち合わせてはいない。それでも足りないものを埋めるだけの能力が彼にはある。労をいとわないプレースタイルや高い戦術眼に裏付けされたポジショニングの良さなどだ。スプリント数は35歳の今もチーム内で上位にランクする。
ストライカーとしても、マインツでの2季連続2ケタ得点。17-18シーズンにはプレミアリーグで前半戦だけで6ゴールをマーク、後半戦は負傷離脱したため実現しなかったが、二けた得点も狙えた。点取り屋としての存在価値も秘めている。
だから、悔しい。