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鳥谷敬から「守護神してるんですねぇ(笑)」能見篤史41歳、オリックスでの兼任コーチは“大変じゃない”
 

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米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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photograph bySankei Shimbun

posted2021/05/22 06:00

鳥谷敬から「守護神してるんですねぇ(笑)」能見篤史41歳、オリックスでの兼任コーチは“大変じゃない”<Number Web> photograph by Sankei Shimbun

コーチ兼任選手としてオリックスに加入した能見篤史(41歳)。苦しいブルペン事情を支える活躍を見せている

 能見が考える「抑えができる能力」とは。

「ボールの強さもそうですし、何か1個、これは負けないという自信のあるものを持っているピッチャー。そこがたぶん一番大事だと思う。そういうピッチャーは何人かいます」

 150キロ台中盤の力強いストレートを投げ込むK-鈴木もその1人だ。

「ブルペンで見ていても、ボールの質は本当に素晴らしい。代わってほしいなと思いますよ」と能見は笑う。

 5月15日の楽天戦では、2点リードの9回表に能見がマウンドに上がったが、この日は制球が定まらず、1死のあと2つの四球と安打で1点差に迫られた。ここで能見が降板し、後を託されたK-鈴木が、自慢のストレートで強気に攻めて後続を断ち、プロ初セーブを挙げて逃げ切った。

 中嶋監督は、「ベテラン陣におんぶに抱っこだったのが、逆に今度、若手もそういうことができるようになったら、ちょっと層が厚くなるのかなと思う」とプラスに捉えていた。

兼任コーチとしての顔

 マウンドで重要な役割を担うだけでなく、今季の能見にはもう一つの顔がある。兼任コーチである。これがなかなか大変そうだ。

 現在一軍に帯同している投手コーチは、高山郁夫コーチと、選手兼任コーチの能見だけ。試合中、高山コーチはベンチにいて、能見と飯田大祐ブルペン担当補佐の2人が、ベンチからの電話を受けてリリーフ陣に指示を伝えるなど、ブルペンを統括している。

 京セラドーム大阪ではブルペンの様子をうかがうことができないので、ほっともっとフィールド神戸で5月14、15日に行われた楽天戦で、グラウンド横にあるブルペンを観察してみた。

 15日のブルペンは慌ただしかった。先発の田嶋大樹が0-2とリードされて5回でマウンドを降り、6回から継投に入る。誰かがマウンドに向かう際には、その時ブルペンにいる全員が扉の左右に並んで送り出す。6回表に竹安大知が出て行くと、能見は富山凌雅に歩み寄って肩を組み、何か耳打ちした。

 ただ、登板前の選手に何かアドバイスすることはあまりないという。

「基本的にあまりやーやー言うことはないですね。出ていくピッチャーが、自分でいろんな経験や失敗をして何か学んでくれるほうが大事なので。そこは本人がどう感じるかだと思う。どちらかといえば、投げて、もしもうまくいかなかった時のケアだとか、そういうことは心がけています」

 6回裏に吉田正尚が田中将大から3点本塁打を放って3-2と逆転。ブルペンでは比嘉幹貴、山田修義が投球練習を始めた。能見コーチはずっと立ったままグラウンドの戦況を見つめている。

 その後、山田、富山を送り出し、8回表のピンチを村西良太がしのぐと、ベンチからの電話を受けた飯田ブルペン担当補佐が、能見に一声かけた。

 ここで、コーチから選手へと、スイッチが切り替わる。

【次ページ】 大変?「全然そんなことないですよ」

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