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渡邊雄太の“最高に楽しいシーズン”をリーダーも称賛「雄太はよく耳を傾け、学んでいた」ラプターズにある“努力”のカルチャーとは?
 

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宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

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photograph byGetty Images

posted2021/05/21 17:00

渡邊雄太の“最高に楽しいシーズン”をリーダーも称賛「雄太はよく耳を傾け、学んでいた」ラプターズにある“努力”のカルチャーとは?<Number Web> photograph by Getty Images

チームのプレイオフ出場は途絶えたが、「最高に楽しいシーズン」と振り返る渡邊雄太。周囲のサポートを受けながら、着実に階段を登った1年だった

 もっともその渡邊にとっても、すべてが楽しく順調なことばかりではなかった。

 特に3月上旬、主力が新型コロナウイルス感染で離脱していた時期は、渡邊にとっても苦しい時期だった。キャリア初のスターターに抜擢されるなどチャンスをもらったが、思ったようにプレーできなかった。シュートが入らず、自信をなくし、消極的になった。貢献できずに出場時間が減り、チームも負け試合が続いた。

「(3月の)オールスター明けぐらいに自分自身もうまくいかなくて、プレータイムも減ってきて、チームも勝てないという状況がしばらく続いた時期があった。(新型コロナウイルス感染から)メンバーも帰ってきたんですけれど、それでもなかなか歯車が合わなかったりで、勝てない時期がしばらく続いていた。そのときは、本当に一番しんどかったですね」と渡邊は振り返った。

「自分も当然勝ちにこだわりたいですし、その勝ちにこだわる中で、自分がコートに立ってチームが勝つ手助けになるようなプレーをしていきたいという中で、それがやっぱりどっちもできていないという状況だった。そこは一番しんどい時期だったと思います」

苦境を乗り越えて感じる充実感

 それでも、シーズンが終わった今、「楽しいシーズンだった」と言い切ることができるのは、その苦境を乗り越えたという手ごたえがあるからだった。「楽しい」というのは、苦労もなく順風満帆だったから出た言葉ではなく、苦境を乗り越えたから感じられる充実感の表現だった。

 渡邊のエージェントのジョー・スミスは、苦しかった時期に渡邊の相談に乗っていた1人だ。自身も14シーズンの間、マイナーリーグやヨーロッパ、南米でプロ選手としてプレーしてきたスミスは、画面越しに見ていたコート上の渡邊のボディランゲージなどから、うまくいっていないこと、自信を失っていることを感じ取ったという。

「雄太とはこの機会をつかむため、苦しいときを乗り切ろうという話をしました」とスミス。

「去年の夏から秋にかけてのオフシーズンに、ロサンゼルスでどれだけ一生懸命練習に取り組み、どれだけアグレッシブにやっていたかを思い出すようにという話もしました。ポジティブなことだけ話すようにしました。私もかつて選手だったから、彼がどんな経験をしているかを理解することができたのです」

【次ページ】 成長を促したメンタル面の向上

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