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渡邊雄太の“最高に楽しいシーズン”をリーダーも称賛「雄太はよく耳を傾け、学んでいた」ラプターズにある“努力”のカルチャーとは?
posted2021/05/21 17:00
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph by
Getty Images
5月16日、トロント・ラプターズのシーズンが終わりを迎えた。6日前にプレイイントーナメント出場の可能性が消滅したことで、7シーズン続いていたプレイオフ出場が途絶えていた。2シーズン前のNBAチャンピオンチームにとっては、厳しく、屈辱的な2020-21シーズンだった。
ラプターズは新型コロナウイルスの影響を、NBA中で一番大きく受けたチームだ。
アメリカ国外を拠点とする唯一のチームのため、今季はシーズン通して本拠地であるカナダのトロントでプレーすることができなかった。1700km以上離れたアメリカのフロリダ州タンパを拠点とし、コーチ陣、選手たちはタンパに仮住まいし、ホテルの宴会場に練習コートを設置した。試合では会場にファンが入れるようになった後も、毎試合、自分たちのファンより対戦相手のファンのほうが多く、ホームゲームもすべてアウェイゲームの雰囲気だった。
さらに、3月上旬にはコーチ陣や主力選手の多くが新型コロナウイルスに感染して長期離脱。しばらくして復帰してきた後も「まるでみんな泥の中を走っているようだった」とマサイ・ウジリ球団社長が振り返ったように、最後まで本調子を取り戻すことはできなかった。結局、シーズン終盤は主力の代わりに若手を起用し、将来に向けての経験と評価の時期と割り切った。
シーズンが終わった後に、選手のなかから「これまでで一番きついシーズンだった」(カイル・ラウリー)「シーズンが終わるのを指折り数えていた」(フレッド・バンブリート)といった言葉が聞かれたのも無理なかった。
「最高に楽しいシーズンでした」
そんななかで渡邊雄太は戦い、チャンスをつかんだ。去年12月にトレーニングキャンプに参加したときはレギュラーシーズンまで残れる保証がまったくないエキジビット10契約だったのを、開幕時にはツーウェイ契約選手としてレギュラーシーズンのロスターに残った。
そして4月には、3年前から目標としてきたNBA本契約を勝ち取った。シーズン終盤にラプターズがプレイオフを諦めて若手育成に切り替えたことも、渡邊にはプラスに働いた。多くの試合に出て、NBAのトッププレイヤーを相手に経験を積むこともできたのだ。ある意味、チームにとって難しいシーズンだったことが渡邊のNBAへの扉を開けた。
「本当に中身が濃い、最高に楽しいシーズンでした」
シーズンを振り返って、渡邊はそう語った。ベテラン選手たちとは対照的なコメントだ。