濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「お前なんかいらない? だからどうした!」 芸能界からレスラー挑戦のウナギ・サヤカがプロレスに“どハマり”するまで
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2021/05/19 11:00
「シンデレラ・トーナメント」で朱里を下し、会場をどよめかせたウナギ・サヤカ
「みんなかわいくてキラキラしてました」
最初はプロレスのことを何も知らなかった。「レスラーは全員、体がデカくて顔にペイントしなきゃいけないというイメージ」だったのだ。だが実際には「みんなかわいくてキラキラしてましたね。こんな世界があるのかと」。
どんどんプロレスにハマっていく自分を感じた。
「最初は、芸能活動をするのに“プロレスラー”という肩書きが一個乗ったら面白いなというくらいの感覚で。それこそ踏み台みたいな感じです。でもやっていくとどハマりしました」
もともとが「アスリート気質」だ。シンクロナイズドスイミング(アーティスティックスイミング)ではオリンピックを目指せる位置にいたし、チアリーディングでは日本一に。プロレスラーも「なっただけ」では終わりたくなくなった。
「このままおばあちゃんになるんじゃなく、やり切ったと思えるものがほしかった。命を燃やしたいっていうか」
スターダムでは中野たむ、白川未奈とユニット「コズミック・エンジェルズ」を結成。全員が芸能経験者で、たむ曰く「地獄を見てきた」。だから余計に、プロレスで成功しなければという思いが強くなる。プロレスについて考える時間が増えたウナギは格闘技ジムにも通った。フィジカルトレーニングも通り一遍のものではなく、自分が目指すファイトスタイルを強化するものに変えた。
「自分はデビューが遅かったので。みんなと同じことをやっている時間もないんですよね」
欲望を隠さないのが逆に美しい
スターダムの選手たちにも刺激を受けた。
「ギラギラした気持ちでスターダムに来たと思ったら、私だけじゃなく全員ギラギラしてました(笑)。誰も現状に満足してない。隙あらばベルトを狙ってくるし、ベルトを持っていても別のタイトルをほしがる。欲と欲のぶつかり合いですよね。欲望を隠さないのが逆に美しいと思います、スターダムは」
通称「コズエン」は6人タッグ王座を獲得し、防衛を続けている。結果を出してはいるのだが、だからこそ「シングルでも頑張らないといけない」と思っている。2月にはシングル七番勝負を敢行するも全敗。トーナメントまではシングル11試合すべて負けている。朱里は七番勝負の最後の相手だった。
「七番勝負の時はとにかくビビってました。でもアーティスト(6人タッグ)のベルトをたむさんと未奈ちゃんが頑張って守ってくれている。ここで私が変わらなきゃいけないと思ってます」